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毒キノコ中毒
肺を包む「胸膜」、肝臓や胃などの臓器を覆う「腹膜」、心臓を包む「心膜」の表面に存在する中皮細胞に発生するガンを悪性中皮腫といいます。発生部位によって悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫、悪性心膜中皮腫に分類されます。
まれなガンといわれてきましたが、近年、発病率が増加傾向にある悪性胸膜中皮腫と悪性腹膜中皮腫については、アスベストへの曝露歴が発症に深く関係していることが明らかにされ、労災に指定されています。
悪性中皮腫は男性に多く、潜伏期間が数十年間と長いのが特徴です。
そしてアスベストを吸入してから20〜50年後に発症することが多く、この発症前の時期に検査を受けても、異常所見は認められません。潜伏期間から考えて、現在発病した人は、数十年前からアスベストを吸入していたと考えられ、厚生労働省では1995年から人口動態統計調査に「中皮腫」を加えました。それによると、1995年には死者が500人であった悪性中皮腫は、2004年の死亡者数が953人と増加しています。
1960年代以降のアスベストの輸入量増加や広範な利用状況を考慮すると、今後さらに悪性中皮腫による死亡者の増加が懸念されています。
すでに、2002年の第75回日本産業衛生学会の緊急報告集会で、早稲田大学の村山武彦教授が、日本における悪性中皮腫の2000年から2039年までの40年間の死亡者数は、10万人を超えると予測しています。
悪性中皮腫はアスベストへの曝露量が多くなればなるほど、あるいはアスベスト曝露からの時間経過が長くなればなるほど発病率が高くなるともいわれています。しかし、どのくらい吸い込んだら発病するのかなど、不明な点がまだ多く、日本では、治癒の決め手となる早期診断法、効果的治療法についての臨床研究も始まったばかりです。
悪性中皮腫は、腫瘍が一ヶ所に固まった限局性のものと、胸膜や腹膜にそって広がるびまん性のものがあり、大多数がびまん性悪性胸膜中皮腫です。息切れ、胸郭より下の疼痛、咳、原因不明の体重減少などの自覚症状がありますが、特徴的な症状に乏しく、早期発見が大変難しい病気です。
進行度は、1期から4期まであり、1期は限局性のもので、ガンは、肺や肺・心臓近くの胸腔表面の膜、横隔膜にみられます。2期は、リンパ節にまで拡がります。3期は、胸壁、縦隔、心臓、横隔膜を越えて進行し、悪性胸膜中皮腫ならば腹膜までも拡がります。4期は、遠隔の臓器や組織にも拡がります。
初診時に、悪性胸膜中皮腫ならば多量の胸水貯留や胸膜の肥厚、悪性腹膜中皮腫では腹水貯留による腹部膨張などの症状がみられる患者が多く、発見時からの病状が進行しており、かつ悪化も急速で、予後は大変厳しいのが現状です。
治療法としては、手術療法(手術でがんを切除する)、放射線療法(高エネルギーの放射線でがん細胞を殺す)、化学療法(薬剤でがん細胞を殺したり増殖を抑制したりする)があり、各治療法を組み合わせることもあります。
悪性中皮腫の症例が多い横須賀共済病院呼吸器科で54例を検討したところ、発症から死亡までの期間の中央値は15ヶ月(最短1ヶ月、最長167ヶ月)であり、発症2年後の生存率は約30%、5年後の生存率は約3.7%と実に深刻な結果です。
厚生労働省では、現在、自覚症状がなく健康に支障がない場合でも、アスベストを曝露するような作業に従事していた人は、1年に1回の胸部レントゲン撮影による健康診断を勧めています。さらに、日常生活で次のような症状が現れたときは、医師の診断をうけることを勧めています。
・息切れがひどくなった場合
・せきやたんが以前に比べて増えた場合や、たんの色が変わった場合
・たんに血液が混ざった場合
・顔色が悪いと注意された場合や、爪の色が紫色に見える場合
・顔がはれぼったい場合や、手足がむくむ場合、体重が急に増えた場合
・はげしい動悸がする場合
・風邪をひいて、なかなか治らない場合
・微熱が続く場合
・寝床に横になると息が苦しい場合
・食欲がなくなった場合や、急にやせた場合
・やたらと眠い場合
労働者健康福祉機構は、全国の22ヶ所の労災病院に、中皮腫など石綿関連疾患の診断・治療・相談の専門窓口「アスベスト疾患センター」を設置しました。このうち、横浜、神戸、長崎(佐世保市)などの7ヶ所の労災病院は、広域的に地域医療機関を支援するブロックセンターとしての治療活動を担っています。
また、仕事による曝露体験が思い当たらない人でも、アスベストは様々な建築物や工業製品に使用されています。健康状態が懸念される場合は、保健所、各都道府県産業保健推進センター、労災病院に設置された窓口で、相談できます。
http://www.rofuku.go.jp/sanpo
アスベストとは
石綿「せきめん」または「いしわた」と呼ばれ、天然に産出するケイ酸塩からなる鉱物性繊維の総称です。この繊維をほぐすと木綿や羊毛のようなしなやかさを持ちながら、拡張力、耐摩耗性、断熱、保温性、耐薬品性に優れているため、建築材、工業製品などの多くの分野で使われました。経済産業省商務情報政策局商務流通グループ製品安全課が、2万社以上を対象に実施した「石綿を含有する家庭用品実態把握調査」(平成17年10月20日、第2回結果公表)では、157社の562製品に石綿が含有されていました。
調査の詳細は、同省のホームページで公表しています。
http://www.meti.go.jp
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