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厚生労働省研究班の「胃がん最新データ」から
生活習慣病対策最新情報「エクササイズガイド2006」〜生活習慣病を防ぐために必要な運動量を公開〜2006年9月、厚生労働省研究班は全国4万人余りを対象にした大規模疫学調査から、胃に住みつく細菌・ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に感染歴のある人は、胃がんになるリスクが約5〜10倍にもなるというデータを発表しました。また、同年1月には、X線による胃がん検診受診が胃がん防止に効果があるという調査結果も報告しています。2006年、同研究班が公表した胃がん最新データを紹介します。
■ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染者は胃がんリスクが5倍以上に
厚生労働省研究班では、1990〜1995年にかけて、全国10エリアで40歳〜69歳までの男性約1万5300人、女性約2万6700人に血液を提供してもらい、経過を追跡するという大規模な疫学調査を行った。この結果、2004年までに胃がんになった人は512人でした。調査対象者の保存血液からピロリ菌感染の有無を調べたところ、胃がんグループでピロリ菌抗体陽性者は94%、対照グループは75%で、採血時に、ピロリ菌抗体陽性者の胃がんリスクは陰性者の5,1倍という結果がでました。また、ピロリ菌は、胃がんの前がん病変である萎縮性胃炎などになると胃の中では住めなくなり、採血時には陰性となることから、ピロリ菌の病原性を決定づけると考えられるたんぱく質の有無で、ピロリ菌に感染したことがあるかどうかを調べたところ、感染歴のある人たちが胃がんになるリスクは、感染歴のない人たちの10.2倍でした。同調査では、慢性萎縮性胃炎がある人の胃がんリスクも調べましたが、陽性の人の胃がんリスクは陰性の3.8倍でした。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とは?
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、1983年、細菌が住みつけないと考えられていた胃から発見されました。その後の研究で、それまでは加齢にともなって起きると考えられていた慢性胃炎や再発を繰り返す胃・十二指腸潰瘍の原因として注目されるようになりました。ピロリ菌は胃潰瘍の60〜80%で、十二指腸潰瘍の90〜95%で陽性であると考えられ、ピロリ菌の発見によって、消化性潰瘍の治療に対する考え方は大きく変化しました。除菌治療は、プロトンポンプ阻害薬と複数の抗生物質をあわせて1〜2週間、服用します。ピロリ菌の発見によって再発潰瘍に対する治療は劇的に変化しましたが、近年、除菌に成功しても100%再発を防げないというケースや、副作用などの報告もあり、除菌が100%有効な万能治療法とはいえなくなってきています。
今回、ピロリ菌と胃がんリスクの調査結果を発表した厚生労働省研究班も、現在のところ、ピロリ菌の除菌が胃がん予防に有効かどうかという確証はないとし、現段階では、喫煙や食生活など生活習慣の改善が大事だとしています。
がんの危険を減らすような生活習慣については、日本対がん協会や国立がんセンターがん予防・検診研究センターなどが以下の指針を公表しています。
【「がんを防ぐ12か条」日本対がん協会】
1.バランスのとれた栄養をとる
2.毎日、変化のある食生活を
3.食べすぎはさけ、脂肪は控えめに
4.お酒はほどほどに
5.たばこは吸わないように
6.食べ物から適量のビタミンと繊維質のものを多くとる
7.塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから
8.焦げた部分はさける
9.かびの生えたものに注意
10.日光に当たり過ぎない
11.適度にスポーツをする
12.体を清潔に
【現状のがん予防指針】
1.たばこを吸う人は禁煙。吸わない人も、他人のたばこの煙を可能な限り避ける
2.適度な飲酒。具体的には、日本酒換算で1日1合(ビール大瓶1本)程度以内。飲まない人は無理に飲まない
3.野菜・果物を少なくとも1日400gとるようにする。例えば野菜は毎食、果物は毎日
4.塩蔵食品・塩分の摂取は最小限。具体的には、食塩として1日10g未満、塩からや練りうになどの高塩分食品は、週に1回以内
5.定期的な運動の継続。例えば、ほぼ毎日合計60分程度の歩行などの適度な運動、週に1回程度は汗をかくような激しい運動
6.成人期での体重を維持(太り過ぎない、痩せ過ぎない)。具体的には、BMIで27を超さない、20を下まわらない
7.熱い飲食物は最小限。例えば、熱い飲料は冷ましてから飲む
8.肝炎ウイルス感染の有無を知り、その治療(感染者)や予防(未感染者)の措置をとる

(国立がんセンターがん予防・検診研究センター「科学的根拠に基づくがん予防」より)
X線の胃がん検診で死亡率が半減
2006年1月に厚生労働省研究班が発表した「胃がん検診受診と胃がん死亡率の関係」を調べた大規模免疫調査から、胃がん検診が胃がん防止に効果的だということが判明しました。
この調査は、岩手県、秋田県、長野県、沖縄県に住む40歳〜59歳までの男女約4万人を13年間にわたって追跡調査し、胃がん検診を受けた人と受けていない人の胃がんにかかったときの死亡率を比較することで、検診が効果的かどうかを判断しています。調査開始時の1990年、過去1年間にX線の胃がん検診を受診している人の数を調べると、全体の36%でした。その後、13年間、調査対象者の胃がんを含むがんになった人を追跡調査した結果、636人が胃がんにかかり、179人が死亡しました。死亡者のうち、胃がん検診を受けていない人に比べて、胃がん検診を受けていた人の死亡率は、約半分の0.52倍と判明。このことから、X線の胃がん検診受診者は、胃がんになっても、受けていない人より死亡率が半減しているということがわかりました。胃がん検診を受けているかどうかは、調査開始時点の過去1年間についてだけなので、調査の限界もありますが、検診受診者が胃がん以外のがんになった場合の死亡率も低いことがわかり、この調査で改めて、検診の重要性が再認識されました。
こうした調査から、同研究班は、生活習慣の改善とともに定期的な検診が大切としています。
【胃がんの情報について】
国立がんセンターがん予防・検診研究センターhttp://www.ncc.go.jp/jp/kenshin/
日本対がん協会http://www.jcancer.jp/
(2006.11.21)
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