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「物忘れ」と認知症最新情報
'元気でボケずに人生をまっとうしたい'──誰もが願うことです。
現状をみると、85歳以上の4人に1人が認知症になるといわれ、厚生労働省では、2005年に約205万人だった認知症高齢者の人数が、2035年は約2.2倍の約445万人という推計結果を発表しています。また、近年、40代、50代で発症する若年性アルツハイマーなども社会問題となっています。多くは「物忘れ」の症状から始まる認知症ですが、残念ながら、現段階の医療では認知症を完治することはできません。が、初期の段階に気づくことで、症状を遅らせる治療は可能な時代です。さらに、なんとか認知症を予防することができないかと、さまざまな研究が進められています。食生活の工夫で予防できないかといった取り組みや、「物忘れ」に有効な栄養素などの研究が注目されています。「認知症」と予防を──。
「認知症」の種類と診断
● アルツハイマー型認知症
「認知症」の研究が進み、現在では、まとめて「認知症」と診断されていたものが、原因や症状の違いで3つのパターンに分類されています。最も多いといわれるのが「アルツハイマー型認知症」です。脳が少しずつ萎縮していくのが特徴で、時間の経過とともに進行していきます。物をしまい忘れたり置き忘れたり、また、鍵やガス栓などの閉め忘れが目立つ初期症状から始まり、時間や場所がわからなくなり、重度になると、身の回りのことができなくなる、家族もわからなくなり、一人で生活することもできなくなります。個人差はありますが、初期から重度まで数年から十数年にわたって進行していきます。なぜ、アルツハイマー型認知症に罹患するのかというはっきりした原因はまだわかっていませんが、進行を遅らせる薬は開発されています。

●脳血管性認知症
「脳血管性認知症」は、脳梗塞や脳出血などで脳の血管が詰まったり、出血することで、脳の働きが悪くなり発症するものです。高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、飲酒などが危険因子といわれ、アルツハイマー型認知症と併発しているケースも多々みられます。

●レビー小体型認知症
「レビー小体型認知症」は、パーキンソン病患者の脳にみられる「レビー小体」という異常な構造物が、大脳皮質(大脳表面の神経組織)に現れ、それが、原因となる認知症です。物忘れの症状が出る場合と出ないケースがあり、特徴的な症状としては、実際にないものが見える「幻視」があげられます。パーキンソン病同様に筋肉のこわばりや体が硬くなる、歩行困難になるといった運動機能障害や、うつ状態になったり、興奮状態になったりと、気分の変動が繰り返され、睡眠中に暴れたりといった症状も現れます。

「物忘れ」の症状が老化によるものなのか、「認知症」によるものなのかは、素人では、なかなか判断がつきません。まして、どのタイプの認知症かを知るには、医療機関での診察が必要になります。認知症の診察は、「物忘れ外来」や「神経内科」「精神科」「心療内科」などで受け付けおり、問診、認知機能テスト、MRIによる脳の画像検査などで、診断します。認知機能テストは、患者が自分のいる場所や時間を理解しているかの質問や、単語の記憶、単語をさかさまから読む、100から7を引いていくなどの簡単なテストでチェックします。認知症を判断するために、医療現場などで幅広く利用されているのが「改訂長谷川式知能評価スケール(HDS-R)」です。
認知症の早期発見が適切な診療のもとに認知症を遅らせることにつながり、患者本人も家族も安心して生活できることにつながりますが、医療機関での受診を躊躇するという声が多く聞かれます。
厚生労働省「認知症予防・支援マニュアル(平成17年度)」では、「長谷川式簡易知能評価スケール」を紹介しています。判断に躊躇うときは、一度、参考になさってはいかがでしょう。だたし、素人判断は禁物です。あくまで、参考程度にと考えてください。

認知症予防には、「食事」「運動」「睡眠」がポイント!
「認知症を完治する治療薬」は、残念ながら、今のところはありませんが、認知症予防の研究は多方面で進められています。当たり前のようですが、予防に大切なのは、「食事」「運動」「睡眠」の3点に気を配った規則正しい生活といわれています。
財団法人東京都高齢者研究・福祉促進財団東京都老人総合研究所は、認知症予防の啓蒙パンフレット「認知症を鍛える脳を作ろう」で、
(1)有酸素運動をしよう
(2)頭を使う生活をしよう
(3)食生活では野菜、果物、魚を多く摂取しよう
と、提言しています。 
実際に「栄養素」と「運動」が大事だというこれらの提言を裏付ける調査結果があるので、紹介しましょう。これは、厚生労働省研究班が2001年から2005年の間、茨城県利根町の65歳以上の住民を対象に5年間にわたり追跡調査をしたもので、約400人の希望者には「運動」や「栄養」の改善を指導し、指導を希望しなかった1500人と比較した調査です。
 指導希望者には、食事については、脳の活性化に効果があるといわれる魚の脂質に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などを含む栄養補助剤を毎日摂取してもらいました。また、運動は、週3〜5回、1回20〜60分、音楽に合わせてステップを踏む簡単な有酸素運動を行い、さらに、30分以内の昼寝をしてもらいました。
その結果、生活習慣を指導しなかったグループの認知症の発症率は4.3%で、指導したグループは3.1%と、しなかったグループの発症率を下回りました。また、記憶力のテストでは、指導したグループの成績が約16%も向上しました。
同研究班は、「栄養素の摂取」「適度な運動」「昼寝」が脳の老化防止に関連があるとして、さらに研究を進めています。

また、最近、注目されているのが、東北大学大学院医学系研究科 大隅典子教授のARA(アラキドン酸)と脳の関連を調べた実験結果(サントリー健康科学研究所との共同研究)です。ARAはDHA同様に脳を構成する重要な栄養素で、「物忘れ」など加齢に伴う脳の働きの低下は、脳内のDHAやARAの減少によるものではといわれてきました。大隈教授は、生後間も無いラットにARAを摂取させ、脳の器官・海馬の神経細胞が増殖することを明らかにしました。この研究で、ARAが記憶力などを司る海馬の神経細胞を新生する作用があることが検証されました。こうした研究者の取り組みで、脳の老化を防ぐために大きな役割を果たす栄養素や、その有効な摂取方法などが明らかになる日も近いかもしれません。

【参考】
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp
財団法人東京都高齢者研究・福祉促進財団東京都老人総合研究所
http://www.fukushizaidan.jp/htm/00zaidan_5.htm
(2009.3.3)
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