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喫煙のリスクと禁煙治療
2010年10月からの増税に伴い、大幅に値上がりしたタバコ。1箱あたり100円以上と、過去最高水準の値上がりとなりました。大手製薬会社が行った調査によると、今回の値上がりをきっかけに「禁煙に挑戦する」と回答した人の割合は50%以上いることが分かっています。
「タバコをやめたいけど、なかなかやめられない」。
今回は、そんな禁煙でお悩みの方に役立つ情報をご紹介します。
日本人の喫煙率の推移(男女別)
近年、日本人の喫煙率は徐々に低下してはいるものの、世界の主要国の中では依然として高く、日本はまだまだ禁煙後進国といえそうです。
男性 女性
1989 61.1% 12.7%
1994 59.0% 14.8%
1999 54.0% 14.5%
2004 46.9% 13.2%
2008 39.5% 12.9%
2009 38.9% 11.9%
2010 36.6% 12.1%
(日本たばこ産業株式会社による調査より)
タバコ消費量が多い国ランキング
順位 国名 年間タバコ消費量(億本)
1 中国 21628
2 アメリカ 3570
3 ロシア 3314
4 日本 2585
5 インドネシア 2390
6 ウクライナ 1180
7 ブラジル 1090
8 インド 1080
9 トルコ 1055
10 フィリピン 960
出典元:(WHO)Tobacco Atlas 2009)
タバコの何が悪いの?
タバコの煙に含まれる化学物質のうち、人のからだに悪影響を及ぼす3大物質は「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」といわれています。
ニコチン
中枢神経系に作用し、心拍数の増加や血圧上昇、末梢血管の収縮等を引き起こします。代謝物には発ガン性が認められています。
タール
タバコに含まれる粒子分子で、フィルターに茶色く付着するヤニのことです。数十種類の発ガン物質が含まれています。
一酸化炭素
体内で酸素よりも早く赤血球と結合します。そのため、脳をはじめ、全身に運ばれる酸素の量が減り、血管が傷つきやすくなります。また、ニコチンの作用による血管収縮で血流量も不足するため、心臓にも負担がかかります。
非喫煙者への影響
タバコの煙には約4000種類の化学物質が含まれ、そのうち200種類以上は有害物質です。そして、タバコの煙には主流煙(喫煙者の肺の中に吸入される煙)と副流煙(火のついた先端から立ち上る煙)とがあり、副流煙による受動喫煙のほうが有害であることも分かっています。
主流煙と副流煙の成分比較
発がん物質(ng/本) 主流煙(MS) 副流煙(SS) SS/MS比
ベンゾ(a)ピレン 20〜40 68〜136 3.4
ジメチルニトロサミン 5.7〜43 680〜823 19-129
メチルエチルニトロサミン 0.4〜5.9 9.4〜30 5-25
ジエチルニトロサミン 1.3〜3.8 8.2〜73 2-56
N-ニトロソノルニコチン 100〜550 500〜2750 5
ニトロソピロリジン 5.1〜22 204〜387 9-76
キノリン 1700 18000 11
ヒドラジン 32 96 3
2-ナフチルアミン 1.7 67 39
4-アミノビフェニール 4.6 140 30
0-トルイジン 160 3000 19
その他の有害物質(mg/本) 主流煙(MS) 副流煙(SS) SS/MS比
タール(総称として) 10.2 34.5 3.4
ニコチン 0.46 1.27 2.8
アンモニア 0.16 7.4 46
一酸化炭素 31.4 148 4.7
二酸化炭素 63.5 79.53 1.3
窒素酸化物 0.014 0.051 3.6
フェノール類 0.228 0.603 2.6
受動喫煙による死者の推計
厚生労働省の研究班は2010年9月、受動喫煙が原因となって発症する肺ガンや心筋梗塞で、年間約6800人が死亡しているとの推計を発表しました。そのうち職場での受動喫煙が原因とみられるのは半数以上の約3600人でした。
喫煙による死者は年間約13万人と推計されています。今回、受動喫煙に関する推計が初めて公表されたことで、公共の場を「全面禁煙」にする動きがさらに加速していくと考えられます。
ニコチン依存度チェック
質問の半分(5個)以上に○がついたらニコチン依存症と診断されます。
ニコチン依存症診断用のスクリーニングテスト(TDS: Tobacco Dependence Screener)
問1
自分が吸うつもりよりも、ずっと多くたばこを吸ってしまうことがありましたか。
問2
禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。
問3
禁煙したり本数を減らそうとしたときに、たばこが欲しくて欲しくてたまらなくなることがありましたか。
問4
禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
問5
問4でうかがった症状を消すために、またたばこを吸い始めることがありましたか。
問6
重い病気にかかったときに、たばこはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。
問7
たばこのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。
問8
たばこのために自分に精神的問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。
問9
自分はたばこに依存していると感じることがありましたか。
問10
たばこが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。

※岡山大学大学院医歯薬学総合研究科のホームページの内容に準拠。
ニコチン依存を克服するには
タバコが止められない原因には、ニコチンへの薬物依存である「身体的依存」と、喫煙習慣による「心理的依存」の2つの依存があります。ニコチン依存を克服し、禁煙を成功させるためには、この2つの依存を同時に克服していく必要があります。
ニコチン依存症
禁煙治療者数の増加

禁煙治療とは、医師の指導のもとで「ニコチン依存症」を改善し、禁煙を実行していくものです。2006年4月から一定の要件を満たせば保険が適用されるようになり、専門の医療機関での禁煙治療が可能になりました。
12週の間に5回受診し、患者負担は1万5千円前後となっています。医師の指導による治療に該当するため医療費控除の対象となります。
禁煙治療に取り組む医療機関も増え、保険適用となる医療施設は全国に1万箇所以上にのぼります(2010年11月現在)。

全国禁煙外来・禁煙クリニック一覧
禁煙治療に保険が使える医療機関情報最新版
(ニコチン依存症管理料算定医療機関)
http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic.html

禁煙治療の施設基準と対象患者
国が定めた施設基準を満たす医療機関において、禁煙治療の対象患者となる4条件をすべて満たすと認められた場合、一定期間の禁煙治療の受診に保険が使えます(外来診療のみ)。
施設基準
(1) 禁煙治療を行っている旨を保険医療機関内の見やすい場所に掲示していること。
(2) 禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること。
(3) 禁煙治療に係る専任の看護師又は准看護師を1名以上配置していること。
(4) 禁煙治療を行うための呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること。
(5) 保険医療機関の敷地内が禁煙であること。なお、保険医療機関が建造物の一部分を用いて開設されている場合は、当該保険医療機関の保有又は借用している部分が禁煙であること。
(6) ニコチン依存症管理料を算定した患者のうち、喫煙を止めたものの割合等を社会保険事務局長に報告していること。
対象患者の4条件
以下のすべての要件を満たす者であること
(1) ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断されたものであること。
(2) ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の者であること。
(3) 直ちに禁煙することを希望している患者であること。
(4)「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意している者であること。
ニコチン置換療法
ニコチン置換療法は、タバコに含まれるニコチンをニコチンパッチやガム等の方法で置換し、禁煙によるイライラや集中困難などの離脱症状を緩和させて禁煙に導く方法です。ニコチンの摂取量を少しずつ減らしながら身体的依存を克服し、最終的にニコチンの摂取量をゼロにします。
ニコチン置換療法に加えて、禁煙外来で医師が精神的なサポートをすることにより、禁煙の成功率を上げることができます。
治療終了9か月後の禁煙成功率
2009年に行われた「ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査」によると、禁煙治療終了9か月後の全対象者に占める「禁煙継続」の割合は29.7%でした。その他、「1 週間禁煙」が1.4%、「失敗」が13.6%、「不明」が22.8%、「無回答」が4.6%、「治療中止時喫煙(9 か月後の状況調査対象外)」が27.8%でした。
男女別にみると、男性の「禁煙継続」の割合は31.0%、女性の「禁煙継続」の割合は26.5%で、男性は女性と比較して「禁煙継続」の割合が4.5 ポイント高くなっています。
  総数 9か月後の状況調査対象 治療
中止時
禁煙

禁煙
継続

1週間
禁煙
失敗 不明 無回答
全体 3,471
100.0%
1,030
29.7%
49
1.4%
472
13.6%
793
22.8%
161
4.6%
966
27.8%
男性 2,463
100.0%
763
31.0%
37
1.5%
356
14.5%
553
22.5%
115
4.7%
639
25.9%
女性 989
100.0%
262
26.5%
11
1.1%
113
11.4%
237
24.0%
44
4.4%
322
32.6%
(中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料より)
喫煙と健康問題について簡単に理解したい方のために

Q喫煙者本人への健康影響について
A喫煙が健康に及ぼす悪影響については、長い研究の歴史があり、今日においては多くの研究成果が蓄積しています。その結果、喫煙者に、がん、心臓病、脳卒中、肺気腫、喘息、歯周病等、特定の重要な疾病の罹患率や死亡率等が高いこと、及びこれらの疾病の原因と関連があることは多くの疫学研究等により指摘されています。 詳しくはこちらへ

Q妊娠中の健康への悪影響について
A妊婦の喫煙による流産、早産、低出生体重児等などの発生率が上昇することも報告されており、妊娠中の喫煙が胎児の発育に悪影響を及ぼすことが指摘されています。 詳しくはこちらへ

Q周囲の非喫煙者への健康影響について
Aたばこの煙による健康への悪影響は喫煙者本人にとどまりません。他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙によって健康への悪影響が生じることも指摘されています。 詳しくはこちらへ

Q依存性について
Aたばこに依存性があることは確立した科学的知見となっています。依存の原因となる物質は、たばこ煙の成分に含まれるニコチンです。そして、ニコチン依存は世界的には独立した疾患として扱われています。 詳しくはこちらへ

Q未成年者の喫煙について
A未成年者の喫煙は法律で禁止されています。たばこには依存性があり、喫煙開始年齢が低ければ低いほど健康への悪影響が大きく現れるという問題があります。 詳しくはこちらへ

Q「噛みたばこ」、「嗅ぎたばこ」について
A「かみたばこ」、「かぎたばこ」は無煙たばこと呼ばれており、たばこの一種です。「かみたばこ」および「かぎたばこ」においても、紙巻きたばこによる喫煙と同様に口腔がんとの関連等、健康への悪影響が指摘されています。 詳しくはこちらへ

【参考】
厚生労働省
厚生労働省の最新たばこ情報
(2010.11.24)
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