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増え続ける「うつ病」に、どう対応するか?
近年、世界的に患者数の増加率が顕著で、大きな社会問題となっている「うつ病」。
厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、平成8年には43.3万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、平成20年には104.1万人と、12年間で2.4倍に増加しました。日本では、うつ病と考えられる人の半数以上が医療機関を受診していないという現状があり、実際にはこれよりもさらに多くの患者がいることが推測されています。
うつ病に悩む本人やその周囲の人にとって、正しい知識を得て早期の対策・治療を選択できる環境を整えることが課題となっています。

気分障害患者数の推移

うつ病とは?
「抑うつ気分」と「抑うつ状態」
「ゆううつである」「気分が落ち込んでいる」などと表現される症状を抑うつ気分といいます。抑うつ状態とは抑うつ気分が強い状態です。このような「うつ状態」がある程度以上、重症である時を「うつ病」と呼んでいます。

原因によるうつ病の分類
  • 内因性うつ病
    典型的なうつ病です。通常は抗うつ薬がよく効き、治療しなくても一定期間内によくなるといわれます。ただ、本人の苦しみや自殺の危険などを考えると、早く治療したほうがよいことはいうまでもありません。途中で躁状態になる場合は、躁うつ病と呼びます。
  • 身体因性うつ病
    アルツハイマー型認知症のような脳の病気、甲状腺機能低下症のような体の病気、副腎皮質ステロイドなどの薬剤がうつ状態の原因となっている場合をいいます。
  • 心因性うつ病
    性格や環境がうつ状態に強く関係している場合です。抑うつ神経症(神経症性抑うつ)と呼ばれることもあり、環境の影響が強い場合は反応性うつ病という言葉もあります。
原因によるうつ病の分類
双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。かつては「躁うつ病」といわれ、うつ病の一種と誤解されがちでしたが、この二つは異なる病気で治療方法も異なります。双極性障害であるのに軽い躁状態に気づかず、うつ病と診断されている人も少なくありません。一般に、躁状態の期間よりもうつ状態の期間のほうが長く続く傾向があります。
また、再発しやすく、躁状態を繰り返すうちに家庭崩壊や失業、破産などの社会的損失が大きくなっていきます。このような繰り返しを治療せずに放置していると、さらに再発の周期が短くなっていきます。周りの人が気づいて早めに治療を開始することが望まれます。
新型うつ病
近年、都市部の20〜30代の若年層を中心に増加していると言われる「新型うつ病」。会社や学校にいる時にだけ症状が現れ、普段の生活やプライベートでは症状が軽くなるなどといった特徴があります。逃避型うつ病とも呼ばれますが、標準化された医学的な定義、分類された病名ではありません。

新型うつ病の特徴
  • 自分の好きな仕事や活動の時だけ症状が軽くなる
  • うつで休職することにあまり抵抗がなく、社内制度をよく確認していて上手に利用する傾向がある
  • 身体的疲労感や不調感を伴うことが多い
  • 自責感に乏しく、他罰的で会社や上司のせいにしがち
  • どちらかというと真面目で負けず嫌いな性格
うつ病に気づいたら
うつ病の症状には、周りからみてわかるサインもあります。こうした変化に気づいたら、本人を見守りながら医師や専門家、地域の相談窓口などに相談してみましょう。
  • 自殺をほのめかす言葉を無視しない
    うつ病は自殺の危険のある病気です。うつ病になった人は、時に自殺をほのめかす言葉を口にすることもあります。そんなときは、批判をしたり、励ますのではなく、まずは聞き役につとめて思いをきちんと受け止めている態度を示します。そして専門家と連絡をとりながら、見守り続けるようにしましょう。
  • 行動を強制しない
    うつ病の人に気晴らしをさせることは、ガス欠の車を無理やり走らせようとするようなものです。まずはうつ状態を受け止めて、元気が戻ってくるのを待ちましょう。
  • 自分自身を追いつめない
    うつ病患者の近くにいて献身的である人ほど、自分ひとりでいろいろな問題を受け止めて疲れきってしまうことがあります。ストレスをためすぎないように、できるだけ周りの人に協力を求めながら、意識して休息をとるようにしましょう。
うつ病のサイン
□自分で感じる変化
うつ病と診断される目安として、次のような症状のうちのいくつかが2週間以上ずっと続く、というものがあります。ひとつひとつの症状は誰もが感じるような気分ですが、それが一日中ほぼ絶え間なく感じられ、長い期間続くようであれば、もしかしたらうつ病のサインかもしれません。
  • 抑うつ気分(ゆううつ、気分が重い)
  • 何をしても楽しくない、何にも興味がわかない
  • 疲れているのに眠れない、一日中ねむい、いつもよりかなり早く目覚める
  • イライラして、何かにせき立てられているようで落ち着かない
  • 悪いことをしたように感じて自分を責める、自分には価値がないと感じる
  • 思考力が落ちる
  • 死にたくなる
□周囲からみてわかる変化
自分で感じる気分の変化だけでなく、周囲からみて分かる変化もあります。「いつもと違う」変化に気づいたら、本人はうつ状態で苦しんでいるのかもしれません。
  • 表情が暗い
  • 涙もろくなった
  • 反応が遅い
  • 落ち着かない
  • 飲酒量が増える
□体の変化
抑うつ状態に気づく前に、体に変化が現れることもあります。
  • 食欲がない
  • 体がだるい
  • 疲れやすい
  • 性欲がない
  • 頭痛や肩こり
  • 動悸
  • 胃の不快感
  • 便秘がち
  • めまい
  • 口が渇く
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うつ病と診断された場合には、一般的に抗うつ薬による治療が行なわれます。ただし、軽症の場合は薬の効果がそれほど期待できないこともあるので、必ずしも薬物療法が有効であるというわけではありません。
原因が明確な場合には、その原因を取り除いていきます。身体的な病気が原因である場合はその治療、薬の影響が考えられる場合は可能であれば薬の中止、それができない場合は別の薬への変更が検討されます。ストレスなどの影響を受けやすい人は精神療法的なアプローチも効果的です。
自分には本当に薬が必要かどうかを主治医に確認しながら治療を受けるようにしましょう。

薬物療法
抗うつ薬といわれるものには、SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)、三環系抗うつ薬など、いくつかの種類があります。また、抗うつ薬の他に、症状に合わせて抗不安薬や睡眠導入剤なども使われます。
どの薬が有効かは治療を受ける人それぞれによって異なり、また同じ人でも病気がどの段階であるかによって違ってきます。

認知行動療法
ものの捉え方や思考など、自分の中にある思い込みによってうつ病が引き起こされていることがあります。その根本にあるゆがみを自覚させることで問題点を少しずつ明らかにし、症状の改善を目指すのが認知行動療法です。

運動療法
ウォーキングなどの有酸素運動には、セロトニンをはじめとする脳内分泌物を促進させる働きがあることが学会で指摘されています。薬物療法よりも運動療法での治療のほうが、うつ病が再発しにくいという検証データも確認されており、うつ病患者に推奨する医療機関もあります。

ハーブの利用
ドイツをはじめとする諸外国では、軽度のうつに対して従来の抗うつ薬よりも広く処方されており、うつ病予防に一定の効果をもたらすことが実証されています。ただし、抗うつ薬との併用による副作用のでるものがありますので注意が必要です。
信頼できる主治医に相談する
「自分はうつ病かもしれない」と思ったら、まずは総合病院の精神科や心療内科、精神科専門のクリニックなどの専門医に相談しましょう。地元の保健所や精神保健福祉センターの相談窓口を利用するのも良いでしょう。ひと口にうつ病といっても、どのタイプのうつ病かによって対応は大きく異なってきます。本当にうつ病なのか、うつ病のどのタイプなのか、などの正確な診断は専門医がきちんと判断しないとなかなか分かりにくいのです。
何より大事なのは、さまざまな情報を集めて信頼できる主治医を探すことです。必ずしも精神科を専門とする医師がよいというものでもありません。そして、疑問点を徹底的に質問し、自分に合ったアドバイスをもらうことが最も重要です。
●うつ病等の精神疾患を有する方は、各種の障害者福祉サービス、医療費の助成などを受けることができます。
【詳しい内容はこちら:皆さまへのサポート
●精神科などの医療機関については、こちらで検索できます。
【詳しい内容はこちら:医療機関を探すには
参考
厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/
(2011.4.22)
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