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現代人の病、痛風〜
「風が吹くだけでも激痛が走る」という症状に由来して名付けられた痛風。現在、日本の痛風患者数は約50万〜60万人で、さらに「痛風予備群」といわれる高尿酸血症(血清尿酸値7.0mg/dL以上)の患者数は約300万〜500万人いるとも推計されています。
現代人の食生活の変化とともに増え続ける痛風とはどのような病気なのでしょうか。その実態についてご紹介します。
痛風の症状
生活習慣病である痛風は一度発症してしまうと治癒が難しく、激痛を伴うため日常生活を困難にするという性質があります。
初期の症状としては、足のつま先(とくに親指)から激痛が発生し、足首の関節から膝関節へと痛みが徐々に上がっていきます。骨折時の痛みに匹敵するともいわれ、症状の進行とともに痛みを感じる部位が広がって痛みの強さも増していくようです。
さらに症状が進行すると関節部などで尿酸の結晶が固まって「痛風結節」といわれる肉芽腫組織を形成し、痛みだけでなく関節障害の原因にもなります。それによって血行が悪くなり、関節や骨の再生が阻害されてしまうことで歩行障害を引き起こすこともあります。そのため歩いたり立ったりするだけでも痛みを感じてしまうのです。
なりやすい人の傾向
痛風は血液中の尿酸値が高くなることで起こります。尿酸値が上昇する主な原因としては、食生活やストレス、性格などが挙げられます。また、痛風の原因となる尿酸を排出する働きには女性ホルモンが関係しているため、痛風にかかる人は女性よりも男性が圧倒的に多いという特徴があります(男女比99:1)。ただ、女性も更年期を過ぎて女性ホルモンの分泌量が減ると尿酸値が上昇し、発症率が高くなるので注意が必要です。
最近では無理なダイエットや偏った食生活が原因でホルモンバランスが崩れ、若い女性でも痛風になる人が増えているといわれます。また、ストレスがたまって体調を崩すと、尿酸の排泄がうまく行われなくなって体内に蓄積し、尿酸値が上昇します。酸性食品や喫煙、過度の飲酒によっても痛風発症の危険性は高まります。とくに、高血糖、高血圧、高尿酸の人は注意が必要です。普段から自分の尿酸値を把握し、定期的に健康診断を受けるなどのケアが大切です。
痛風チェック
あなたの痛風危険度はどれくらいでしょう?下記の質問に対する答えの点数を合計して、チェックしてみましょう。
1. 血液1デシリットルあたりの尿酸値(ミリグラム)は
7.0以下

0点

7.1〜8.0

1点

8.1〜9.0

4点

9.1〜10.0

7点

10.1以上

10点

2. 痛風発作を起こしたことが
ない

0点

1回ある

5点

2回以上ある

8点

3. 4等身(いとこ、大おじ、大おば等)以内の血縁に痛風患者が
いない

0点

いる

3点

4. 尿路結石と診断されたことが
ない

0点

ある

2点

5. 20歳の時より体重が10キロ以上増えて
いない

0点

いる

2点

6. 高血圧で
ない

0点

ある

1点

7. 中性脂肪が高いと指摘されて
いない

0点

いる

1点

8. アルコール飲料は
全く飲めない

2点

あまり飲まない

0点

よく飲む

2点

9. ビールは
あまり飲まない

0点

大好き

1点

10. 過食傾向が
ない

0点

ある

1点

11. 精神的ストレスが
少ない

0点

多い

1点

合計点が
6〜10点:日常生活で少し注意が必要です
11〜15点:治療が必要である可能性が高く、専門医の受診を勧めます
16点以上:絶対に治療が必要です

(注)山中寿・東京女子医大助教授による

合併症
発作に伴う痛みばかりが注目されがちな痛風ですが、尿酸値が上がることにより長期にわたって問題となるのは様々な合併症です。尿酸値が高い人は、自覚症状があらわれなくても定期的に健康診断を受けるなど注意が必要です。

高脂血症
高脂血症とは血清中の総コレステロールが220mg/dL以上であるか、中性脂肪が150mg/dL以上となった状態をいいます。肉などの高たんぱく・高脂肪食品を好んで食べる人に多く発症するのが特徴です。高脂血症は動脈硬化を引き起こしやすく、虚血性心疾患や脳血管障害などの原因にもなります。痛風患者の50〜70%は高脂血症を併発しているといわれています。

尿路結石
痛風になって尿酸値が上がると、尿路に尿酸やシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムなどが集まって結晶化します。この結晶が尿管の細いところで詰まって臓器を傷つけ、激しい痛みや血尿を起こすのが尿路結石です。痛風患者の約30%に尿路結石が起こるといわれています。

糖尿病
血糖値と呼ばれる血液中のブドウ糖濃度が正常値より高い状態(空腹時血糖値126mg/dL以上)が慢性的になる病気です。糖尿病を発症すると腎臓障害や神経障害など生活に支障をきたす症状が現れる為、とても厄介な合併症です。

虚血性心疾患
心臓に栄養と酸素を供給する冠状動脈に動脈硬化が起こることによって心臓の血液供給が滞ってしまう症状をいいます。心筋梗塞や狭心症の総称で、重度になると命にかかわる事態になる恐れもあります。

偽痛風
偽痛風(ぎつうふう)は足の関節の痛みや炎症、発熱を引き起こすなど、痛風にとてもよく似た症状を持つ疾患です。「関節軟骨石灰化症」とも呼ばれます。血液中の尿酸が結晶化することによって発症する痛風とは異なり、関節液中にピロリン酸カルシウムの結晶が沈殿することで発症します。また、ピロリン酸カルシウムは尿酸とは違ってX線を通さないため、レントゲン写真で確認することができるのも偽痛風の特徴です。
痛風予防のポイント
昔は「帝王病」ともいわれ、貴族などごく一部の人がかかる病気と考えられていた痛風。現代人の食生活の向上にともない、かつてのようなぜいたく病ではなく、私たちに身近な生活習慣病として根付きつつあります。では、痛風になるのを防ぐために、どのようなことに気を付けていればよいのでしょうか。
※痛風予防の対策をとるときには適度な運動と栄養バランスに気をつけなければなりません。過度の運動や栄養摂取制限は、かえって痛風発症の危険性を高めてしまう可能性もあります。かかりつけの医師や専門家と相談しながら予防を行うことをおすすめします。
尿酸値のコントロール
尿酸は食べ物などに含まれるプリン体が分解してできた老廃物で、血液中の濃度が高くなると結晶化して体内に蓄積され、痛風の原因となります。できるだけプリン体の摂取を控えて血液中の尿酸濃度を基準値の7.0mg/dL以下におさえることで、痛風発症のリスクを低減することができます。
プリン体が多く含まれる食品
ランク 食品名
極めて多い(300〜) きわめて多い 鶏レバー、まいわし干物、イサキ白子、アンコウ肝酒蒸し、かつお節、にぼし、干ししいたけ
多い(200〜300) 多い豚レバー、牛レバー、かつお、まいわし、まあじ干物、サンマ干物、大正エビ
少ない(50〜100) 少ないうなぎ、わかさぎ、豚ロース、豚バラ、牛肩ロース、牛肩バラ、牛タン、マトン、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、つみれ、ほうれん草、カリフラワー
極めて少ない(〜50) きわめて少ないコンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼きちくわ、さつま揚げ、数の子、すじこ、ウィンナーソーセージ、豆腐、鶏卵、とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、米飯、パン、うどん、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、ひじき、わかめ、こんぶ

【参考】日本痛風・核酸代謝学会:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン

適度な運動
適度な運動適度な運動は痛風の予防に効果があります。ただし、激しい運動をすると発汗によって尿の量が減り、尿酸の排出量が減少して尿酸値を一時的に上昇させるため、痛風の発病リスクを高めてしまいます。決して無理をせず、毎日少しずつ運動を行うようにしましょう。
体内の水分調節
体内の水分調節痛風を引き起こす尿酸は排尿以外の手段で体外に排出することができません。水分補給をこまめに行って排尿を促進することが痛風予防に効果を発揮します。私たち人間のからだは1日に約2リットルから3リットルの水分補給を必要としているので、出来るだけ水分補給を欠かさないことが大切です。コーヒーやお茶など、利尿作用のある飲み物を飲むのも良いでしょう。ただし、利尿剤などの服用は腎機能の低下や高尿酸血症の原因となる可能性もあるので注意が必要です。
ストレス耐性を高める
ストレス耐性を高めるストレスの蓄積が痛風の発病リスクを高める原因になることが多くの研究から分かってきています。目や耳から入ってくる情報をできるだけ少なくしてストレス要因を減らし、ストレス耐性を高めるための運動などを取り入れるのも有効です。
発症してしまったら…
痛風の発作は、ある日突然やってきます。発作が起こったときに、あわてずに対応できる環境にしておくことが大切です。薬の場所や処置の方法など、家族にも説明しておきましょう。
応急処置方法
  • 安静にする
    安静にする横になるなど、患部を動かさず安静にしていましょう。
    動いたり、マッサージをすると症状が悪化して痛みが増してしまいます。

  • 患部を心臓より高くして冷やす
    患部を心臓より高くして冷やす静脈のうっ血を防いで痛みを和らげるために患部の位置を心臓よりも高くします。その状態で、氷や水、湿布などで患部を冷やして関節の炎症を抑えます。

薬物治療
痛風を発症した場合、「食事治療」と「薬物治療」を併用して行うのが基本となります。食事治療については医師からアドバイスされた食事メニュー等に従った食生活を送ります。薬物治療については「発作時に使う薬」と「尿酸産生の抑制、尿酸排泄の促進に働きかける薬」に大きく分類されます。
  • 発作時に使う薬
    主に「コルヒチン」と「非ステロイド抗炎症薬」の2種類が使われます。コルヒチンは、痛風発作が起こりそうなときに予防薬として使います。非ステロイド抗炎症薬は、腫れや痛みを取り除く作用があります。痛風発作が起こったときになるべく早く使い、痛みが治まれば使用を中止します。
  • 尿酸産生阻害薬
    尿酸産生過剰型の高尿酸血症の患者に対して処方される薬です。体内での尿酸の産生を阻害することで尿酸の血中濃度を抑える働きがあります。薬によっては尿酸値を急激に低下させると痛風関節炎や尿路結石を引き起こす恐れがあるので、徐々に尿酸値を下げていくのが好ましいです。
  • 尿酸排泄促進薬
    排尿によって体内にたまっている尿酸の排泄を促して、血液中の尿酸濃度を低下させる働きがあります。尿酸排泄促進薬を用いると一時的に尿中の尿酸量が増えるので、尿路結石が起こらないように注意する必要があります。定期的な検査で尿酸値をチェックして継続的にコントロールすることが重要で、適切な薬の服用が痛風発作や合併症の予防になります。
【参考】
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp
(2011.7.7)
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