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がん粒子線治療〜切らずに治す先進医療〜
従来の治療法よりも高い治療効果が期待できるとともに、患者への身体的な負担が少ないため、新時代のがん治療法として注目を集めている「粒子線治療」。通院での治療が可能になるなど、患者のQOL(Quality of Life)向上の観点からも、今後のさらなる普及が期待される粒子線治療の現状についてお伝えします。
がん死亡率の推移
1980年代に脳血管疾患を抜いてから、日本人の死因のトップとして現在も上がり続けている悪性新生物(がん)。全死亡者数に占める割合も30%を超え、今後さらに増えていくことが予測されています。
ウィリアム・レイ博士による電磁波過敏症の13の症状分類

厚生労働省 平成22年人口動態統計「主な死因別にみた死亡率の年次推移」

がんの治療法
がんの主な治療法には、大きく分けて「外科療法」、「薬物療法」、「 放射線療法」があります。
  • 外科療法
    がん細胞を直接切除して身体から取り除く治療法で、 「手術療法」 ともいいます。
    広い範囲に転移が無く、あまり大きく増殖していない、おもに初期〜中程度進行がんに選択されます。治療効果を高めるために、外科療法によってがん細胞を取り除いた上で、放射線療法や薬物療法を組み合わせる「集学的治療」が行われることもあります。
  • 薬物療法
    抗がん剤やホルモン剤、免疫賦活剤等の製剤投与によって、全身的な抗がん効果を得ようとする治療法です。薬の成分が血流に乗って、全身に行き渡るため「全身療法」ともいわれます。
    抗がん剤には、がん細胞を攻撃する主作用とともに、正常な細胞も傷つけてしまう副作用があります。この副作用をいかにコントロールできるかが、薬物療法における大きな課題となっています。
  • 放射線療法
    正常な細胞に比べて放射線に弱いというがん細胞の性質を利用した治療法で、通常の放射線治療(エックス線、ガンマ線など)と、粒子線治療(重粒子線、陽子線など)があります。
    外科療法のようにメスを入れることによる痛みがないというメリットがある反面、通常の放射線治療では、がん細胞の周囲の正常な細胞も傷つけてしまうという副作用の克服が課題とされてきました。
    そこで、正常な細胞への影響を減らしながら、がん細胞を効果的に放射することが可能な「粒子線治療」が注目されています。
粒子線治療とは
現在実用化されている粒子線治療には、水素原子核(陽子)を用いた「陽子線治療」、炭素原子核(重粒子)を用いた「重粒子線治療」があります。それぞれの元素の原子核を加速器で光速近くまで加速し、がん細胞に粒子線を照射してダメージを与える最先端の治療です。いずれもまだ健康保険は適用されておらず、厚生労働省による先進医療に認定されています。
従来の放射線治療で用いられるエックス線やガンマ線は、体表面で放射線量が最大になり、人体内部深くに入るにつれて線量が減少していきます。これでは、体の深い部分にあるがん細胞にダメージを与える前に正常な細胞を傷つけてしまいます。これが一般的に知られている放射線治療の副作用です。
それに対し粒子線は、ある深さにおいて放射線量が最大になり、一定の深さ以上には進まないという特性があります。がん細胞のある場所や形状に合わせてピンポイントで放射線を照射することで正常な細胞へのダメージを最小限に抑えることができるのです。そのため副作用は少なく、治療中の痛みや傷痕の心配もありません。さらに早期の社会復帰を可能にするという点で、患者にとっては大きなメリットのある治療法といえるでしょう。
放射線の種類
放射線 光子線 エックス線
ガンマ線
粒子線 陽子線
重粒子線

放射線の種類
重粒子線治療の治療成績
放射線医学総合研究所 重粒子医科学センターにおいて、1994年6月〜2012年2月までに行われた重粒子線治療の登録患者数です。
重粒子線治療の治療成績

出典:放射線医学総合研究所

粒子線治療を受けられる施設
現在、日本には粒子線治療を受けられる施設が9カ所あります(重粒子線:3ヵ所、陽子線:7ヵ所 <兵庫県立粒子線医療センターは1つの施設に両方設置>)。
※治療費用や対象疾患について、詳しくは各医療機関にお問い合わせください。
陽子線治療
  • 南東北がん陽子線治療センター(福島県郡山市)
    http://www.southerntohoku-proton.com/
    治療費: 288万3千円
    治療対象:前立腺がん、頭頚部がん、直腸がん、脳の悪性腫瘍、転移性腫瘍(単発腫瘍)、非小細胞肺がん、肝がん、食道がん 他
  • 筑波大学附属病院 陽子線医学利用研究センター(茨城県つくば市)
    http://www.pmrc.tsukuba.ac.jp/
    治療費:248万4千円
    治療対象:肝細胞がん、前立腺がん、肺がん、食道がん、頭頚部がん、脳腫瘍、頭蓋底腫瘍、膀胱がん 他
  • 福井県立病院 陽子線がん治療センター(福井県福井市)
    http://info.pref.fukui.jp/imu/fph/youshisen/
    治療費:照射回数 〜20回:240万円
    照射回数 21〜25回:250万円
    照射回数 26回以上:260万円
    治療対象:頭頸部腫瘍、非小細胞肺がん、肝細胞がん、前立腺がん、転移性腫瘍(肺、肝、骨、軟部) 他
  • 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)
    http://www.ncc.go.jp/jp/ncce/
    治療費:288万3千円
    治療対象:脳腫瘍(原発性のみ)、頭蓋底腫瘍(脊索腫・軟骨肉腫など)、頭頸部腫瘍、肺がん、肝細胞がん、転移性肝がん(単発で他の部位に転移がないもの)、骨軟部肉腫、前立腺がん 他
  • 静岡県立静岡がんセンター(静岡県駿東郡)
    http://www.scchr.jp/youshisen/index.html
    治療費:基本料 240万円(10回照射までを含む)
    ※静岡県民の場合は、上記より20万円が減免されます。
    照射料 10万円/5回
    上限額 280万円
    治療対象:脳腫瘍、頭蓋底腫瘍、耳鼻科領域の悪性腫瘍、肺がん(原発性)、肝細胞がん、前立腺がん 他
  • メディポリス医学研究財団 がん粒子線治療研究センター(鹿児島県指宿市)
    http://www.medipolis-ptrc.org/
    治療費:288万3千円
    治療対象:頭頸部がん、頭蓋底がん、肺がん、肝臓がん、前立腺がん、骨軟部腫瘍(悪性)、直腸がん術後局所再発がん、縦隔腫瘍(悪性)、局所進行膵臓がん、腎臓がん、転移性腫瘍(肺、肝臓、リンパ節に1個のみ) 他
重粒子線治療
  • 群馬大学医学部附属病院 重粒子線医学センター(群馬県前橋市)
    http://hospital.med.gunma-u.ac.jp/heavy-ion.html
    治療費:314万円
    治療対象:前立腺がん、肺がん、肝細胞がん、頭頸部腫瘍、直腸がん手術後の再発、骨軟部腫瘍、リンパ節再発 他
  • 放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター(千葉県千葉市)
    http://www.nirs.go.jp/hospital/index.shtml
    治療費:314万円
    治療対象:脳腫瘍、頭頚部腫瘍、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮がん、直腸がん、前立腺がん、骨・軟部腫瘍、眼球腫瘍、涙腺がん 他
陽子線治療/重粒子線治療
  • 兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市)
    http://www.hibmc.shingu.hyogo.jp/
    治療費:288万3千円
    治療対象:頭頸部がん、頭蓋底腫瘍、肺がん、肝臓がん、前立腺がん、骨軟部腫瘍、直腸がん術後再発、膵がん、その他

※2012年3月1日現在 厚生労働省調査

先進医療としての粒子線治療
粒子線治療の治療費は、先進医療の自己負担分が300万円前後と非常に高額です。病状によって4週間〜8週間程度の治療期間を要し、さらに入院費用等の保険診療分の負担が発生します。
また、全てのがん患者が治療を受けられるわけではなく、疾患ごとに定められた基準を満たすことが前提となります。
粒子線治療をスムーズに受けるためには、先進医療について詳しい専門医の協力が欠かせません。患者本人にとって最良の選択ができるように、事前に正しい情報を入手したうえで決断することが大切です。
【参考】
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/
放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター
http://www.nirs.go.jp/hospital/index.shtml
医用原子力技術研究振興財団
http://www.antm.or.jp/index.html
(2012.5.21)
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