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 「成人麻疹」が大流行 〜日本は「麻疹輸出国」!?〜
ゴールデンウィーク明け、「麻疹(はしか)」が10〜20代の若者に広まり、首都圏の大学が次々と休講しました。感染は、さらに拡大しています。
空気感染(飛沫・接触も)する麻疹ウイルスは強い伝染力をもち、免疫のない人が感染するとほぼ100%が発病します。こうしたことから、上智大学は約10人、早稲田大学では30人、慶応大学は34人と、各大学ともに十数人の感染者を確認した時点で休講にしています。本来は、乳幼児期に罹るものとされる麻疹ですが、近年、15歳以上の感染者(成人麻疹は18歳以上)が急増して問題になっています。予防接種が唯一の予防策とされていますが、成人麻疹患者のなかには予防接種をしているにもかかわらず、発病した例も少なくありません。国立感染症研究所によると、毎年、乳幼児も含む全体で推定10〜20万人規模で患者が発生し、周期的に大流行します。グローバル的には、日本は、麻疹根絶に成功した米国などから「麻疹輸出国」として警戒されています。WHO(世界保健機関)では日本を最も対策の遅れた「制圧期」(恒常的に発生し時に流行が起こる)に位置づけし、2012(平成24)年までに麻疹排除を目標に掲げています。成人麻疹・麻疹対策の最新情報をー。
予防接種をしていても感染!「成人麻疹」には、抗体の検査と予防接種を
国立感染症研究所に、2007年の第21週(5月27日)までに、全国約450カ所の基幹定点となっている医療機関から報告された成人麻疹総数(届出対象は15歳以上)は387例です。年齢別にみると20〜24歳(33.3%)、25〜29歳(23.3%)、15〜19歳(21.4%)、30〜34歳(12.9%)で、29歳以下が約80%を占めています。麻疹は、重症になると肺炎や、中耳炎、脳炎などを引き起こし、死に至るケースもあります。厚生労働省の人口動態統計をみると、2005(平成17)年は2人、2004(平成16)年は1人と、毎年、成人麻疹で死亡する人がいます。

麻疹による死亡者数(厚生労働省 人口動態統計より)
2001
平成13年
2002
平成14年
2003
平成15年
2004
平成16年
2005
平成17年
全国 麻疹 11 6 3 2 1
成人麻疹 10 4 3 1 2

麻疹予防に有効なのは、唯一、予防接種です。ところが、成人麻疹患者のなかには予防接種をしていたにもかかわらず、感染した人もいます。
今年の大流行の原因として、東京都健康安全センターは「近年麻疹の発生が少なくなったために、予防接種の二次性ワクチン効果不全(secondary vaccine failure, SVF)の人が蓄積され、集団全体としての免疫が低くなっていた可能性が考えられます」との見解を示しています。
予防接種によってできた免疫は、麻疹が流行するたびに野生ウイルスに接触して強化されます。それが二次性ワクチン効果で、この効果によって強化された免疫が感染を防ぎます。昔に比べると、麻疹は小規模で地域的な流行しかみられなくなり、自然、野生ウイルスに触れる機会が少なくなり、強化されるはずの免疫がだんだん低下して効き目がなくなってしまったわけです。
麻疹は一度罹ると終生免疫が獲得されて、生涯罹ることはありません。40歳以上は、終生免疫があるといわれる世代なので心配ありませんが、二次性ワクチン効果が不確実とされる10〜20代は注意が必要です。罹患歴のわからない人や、予防接種をしていても「麻疹患者と接触した」「生活エリア内で麻疹患者の発生を確認した」場合は、「抗体検査」で免疫の有無を調べましょう。空気感染する麻疹は、マスクでは防げず、すれ違っただけでも感染する伝染力があります。麻疹ウイルスは、感染後10〜12日ほどの潜伏期を経て発熱、咳など風邪に似た症状のあと高熱がでて発疹が全身に広がります。感染源となる期間は、発病前3〜4日から発疹出現後2〜3日です。感染しても72時間以内なら、予防接種に効果があり、発症しても、軽くすみます。
抗体検査・予防接種を実施している医療機関については、近くの保健所で教えてもらえます。
症状の軽い「修飾麻疹」にも注意を!
東京都健康安全センターは、比較的症状が軽い「修飾麻疹」が発症したという報告もあることから、「修飾麻疹」への注意も呼びかけています。「修飾麻疹」は予防接種で作られた免疫があるものの、免疫力が低下したために発症するもので、症状が軽いため風邪と間違えやすく、発熱しても発疹しないこともあります。本人が麻疹と気がつかずに動き回ると、感染拡大につながります。少しでも麻疹が疑われる場合には、医師の診断を仰ぎましょう。感染症は予防に努めると同時に、万が一、感染した場合は、感染源とならないように気をつけることも大事です。
麻疹“ゼロ”を目指して 〜昨年から予防接種は2回に〜
2006年、厚生労働省は、麻疹の予防接種を1回から2回に改めました。麻疹を根絶した米国は、麻疹・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)・風疹の3種混合MMRの2回接種を徹底しています。2回接種は、より確実に免疫をつけるためで、WHOが「麻疹排除期」(国内伝播はほぼなくなり根絶に近い状態)とする「麻疹先進国」は2回接種を基本としています。
日本の麻疹予防接種の歴史を振り返ると、1966(昭和41)年にスタートしましたが、任意だったために接種率は低く、1978(昭和53)年に定期予防接種に組み入れられました。以後、接種率が上昇し、感染防止に効果をあげました。当時は、1969(昭和44)年に開発された高度弱毒生ワクチンが使用されていましたが、1989(平成元)年に、麻疹・おたふく風邪・風疹の3種混合のMMRワクチンの使用が許可され、接種を受けるさいに、単独かMMRかを選択できるようになります。ところが、その後、MMRに含まれるおたふくかぜワクチン株の副作用による無菌性髄膜炎が多発し、1993(平成5)年にMMRワクチンの接種が中止になりました。翌年の1994(平成6)年には、再び、予防接種法が改正され、予防接種は「努力義務」にかわりました。MMRワクチンが導入された期間、副作用を恐れて予防接種を受けさせなかった親が多かったと推測されています。このときの予防接種の対象年齢が生後12〜90カ月未満ですから、現在、成長して成人麻疹の感染世代になっています。
WHOは、麻疹を排除するには95%以上の予防接種率の確保が必要としています。厚生労働省予防接種副反応研究班の調査では、2000(平成12)年度のワクチン接種率は81%で、初めて80%を超えたとしています。しかし、麻疹対策は、麻疹が流行した地域ほど力を注ぐなど自治体で異なり、接種率にも差があります。
2006年から導入された新制度は、第1期(1歳から2歳未満)と第2期(小学校就学前1年間)の2回接種ですが、国立感染症研究所感染症情報センターが実施した全国調査では、昨年10月1日時点で、第2期の就学前児童のワクチン接種率は29.4%と予想以上に低いものでした。同センターは「麻疹は1000人に1人は脳炎を引き起こす感染症です。軽く考えずに予防接種を受けてほしい」と注意を促しています。
【参考:麻疹についての情報】
国立感染症研究所感染症情報センター 
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/
東京都感染症情報センター      
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/top.html
(2007.6.13)
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