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厚生労働省研究班の「大腸がん最新データ」から〜便通、便の状態と大腸がん罹患の関係は?〜
1981(昭和56)年以降、日本人の死因の1位は「がん(悪性新生物)」(厚生労働省・人口動態統計)ですが、近年、がんのなかでも、部位別には「大腸がん」の急増が懸念されています。ことに、女性の増加が著しく、2003(平成15)年には女性の「大腸がん」死亡数・17883人は、胃がん・17393人を上回りトップになりました。
以降、連続して1位で、2005(平成17)年の死亡数は18684人。死亡率は結腸がんが21・2%、直腸S状結腸移行部及び直腸がんは7・7%でした。がん予防と原因の解明に努める厚生労働省研究班は昨年末、「便秘によって大腸がんのリスクは高くなると」という長年の通説を否定する調査結果を公表しました。また、今年3月には「大腸がんの検診を受けた人は、大腸がんの死亡率が約7割低い」という13年間に及ぶ追跡調査の結果を発表しています。大腸がん予防に役立つ最新情報を紹介しましょう。
便秘は大腸がんリスクと関係ない
「便通、便の状態と大腸がん罹患の関連」の大規模疫学調査は1993(平成5)年から、全国の40歳から69歳までの男女約6万人を対象に実施されました。調査スタート時に、日常生活での“便通”と“便の状態”について質問。“便通”については「毎日2回以上」「毎日1回」「週2回〜3回」の3項目から、“便の状態”については「下痢」「軟便」「普通」「硬い便」「下痢と便秘を繰り返す」の選択肢からひとつを選んでもらい、約7年間にわたり追跡調査をしました。その結果、男性2万7529人のうち303人、女性3万411人のうち176人が大腸がんを発症しました。
選択肢別に回答者をグループ分けし、大腸がんになる危険率(ハザード比)を分析すると、便通が「週に2〜3回しかない」グループの危険率は、男性が1.0倍、女性が0.8倍、「毎日1回」は男性、女性ともに1.0倍、「毎日2回以上」は男性1.0倍、女性が1.2倍でした。この結果、便通が「週に2〜3回」の“便秘グループ”が、「毎日1回」「毎日2回以上」のグループと比べて大腸がんになる危険率が高くなるということはありませんでした。
長年、便秘をすると便に含まれた有害物質が腸に長くとどまることで「便秘の人は大腸がんになりやすい」といわれてきましたが、この俗説が覆され、便秘がちの人とそうでない人との大腸がんリスクは変わらないことが判明しました。
“便の状態”の調査結果では、大腸がんのなかでも「直腸がんと下痢」の関係が注目されました。「便の状態と直腸がんのリスク」の危険率(ハザード比)は、「下痢」のグループが男性2.5倍、女性は11.3倍と高い数値でした。「軟便」は男性1.1倍、女性1.5倍、「普通の便」は男性、女性ともに1.0倍、「硬い便」は男性0.2倍、女性1.0倍。「下痢と便秘を繰り返す」は男性0.8倍、女性1.3倍で、下痢の人は直腸がんのリスクが高い傾向がみられましたが、同調査班は今後も検討が必要だとしています。いずれにしろ、これからの「直腸がんと下痢」の関係を明らかにする研究が期待されます。



厚生労働省研究班(JPHC研究)「便通、便の状態と大腸がん罹患との関連について」より
「潜血便検査」受診者は、死亡率が7割減
今春、発表された大規模疫学調査「大腸がん検診受診と大腸がんとの死亡率の関係」は、1990(平成2)年から2003(平成15)年までの13年間にわたり、全国の40〜59歳の男女・約4万2000人を追跡調査し、分析したデータです。調査スタート時に、1年以内に大腸がん検診の「便潜血検査」を受診したかどうかを回答してもらい、受診者と受診していない人のグループに分けて、その後の大腸がん死亡率を比較しました。
調査スタート時の検診受診者は全体の17%で、13年間に全体の597人が大腸がんにかかり、132人が死亡しました。その結果、大腸がんで死亡した人の危険率(ハザード比)は、潜血便検査受診者グループが受診していない人の0.28倍で、約70%近くも低い数値でした。つまり、潜血便受診者は約7割も死亡率が少ないということです。同調査班は大腸がん検診を受けることで、大腸がんが早期に発見される可能性が高くなり、死亡を予防できるとしています。
潜血便検査は検便によって、便のなかに血液が混じっているか否かでがんやがんを誘発しやすいポリープの有無を調べる検査で、職場や地域の集団検診などで普及しています。約7%が「精密検査」が必要という判定を受け、全大腸内視鏡検査を基本とした検査を受けることになります。
また、大腸がん以外のがん全体の死亡率も検査受診グループは0・82倍で、受診していないグループに比べて約2割低い数値でした。受診グループは日常生活でも健康意識の高いグループと推察されますが、検診受診は健康維持及び、がんにかかっても死亡率を低下させるための手軽で有効な方法といえます。
大腸がんの自覚症状〜出血には注意を!
大腸は、小腸から続いた盲腸と肛門までの約1.6mの消化管で、盲腸、結腸、直腸に分けられます。大腸がんは大腸の粘膜にできる悪性の腫瘍で、S字結腸と直腸に多くみられ、結腸がん、直腸がんを総称して「大腸がん」といいます。ポリープのような早期のものから、腸を塞いでしまうような潰瘍型の進行がんまで様々な種類・段階があります。
大腸がんは顕著な自覚症状がなく、症状だけで気づくのは難しいといわれています。それでも気をつけたい症状は、「出血」「下痢や便秘などの便通異常」です。出血は比較的初期の段階で見られ、排便時に便に血が混じったり、血の固まりが出たりします。色はやや黒ずんでいることが多く、血液と一緒に粘液が混じっていることもあります。こうした出血は直腸がんに多くみられますが、これは痔とまぎらわしい症状で、痔だと勘違いするケースもあります。痔の場合は肛門からの出血のため真っ赤な血がでます。また、排便のあとで真っ赤な血がポタポタ便器に落ちたりするのが典型的な症状です。さらに、がんが進行すると腸が狭くなり、排便が思うようにいかなくなり、下痢や便秘を繰り返すようになります。腸が狭くなることに伴い、便が細くなるというのも大切な自覚症状です。注意したいのは、これらの出血や便通異常などの症状は必ずしも毎日見られるとは限らず、一時的にはなんともなくなってしまうこともあるということです。こうしたことからも、「潜血便検査」は大腸がんの早期発見に役立つことが分かります。出血や便通異常が続くときは、医師の診断を仰ぎましょう。
急速に増えている大腸がんですが、罹患の明らかな原因はわかっていません。体質など遺伝的な要因もあるのではないかといわれていますが、食生活や運動など日常生活に起因する生活習慣病でもあるといわれ、予防は他のがん同様に普段の適正な運動と食生活といわれています。
国立がんセンターがん予防・検診研究センター、日本対がん協会による「科学的根拠に基づくがん予防の指針」
(1)たばこを吸う人は禁煙。吸わない人も、他人のたばこの煙を可能な限り避ける。
(2)適度な飲酒。具体的には日本酒に換算して1日1合(ビール大瓶1本)程度以内。飲めない人は無理に飲まない。
(3)野菜・果物を少なくとも1日400g取るようにする。例えば、野菜は毎食、果物は毎日。
(4)塩蔵食品・塩分の摂取は最小限。具体的には食塩にして1日10g未満。塩辛や練りウニなどの高塩分食品は、週に1回以内。
(4)定期的な運動の継続。例えば、ほぼ毎日合計60分程度の歩行などの適度な運動、週に1回程度の汗をかくような激しい運動。
(5)成人期での体重を維持(太り過ぎない、痩せ過ぎない)。具体的にはBMIで27を超さない、20を下まわらない。
 ※BMI=体重(kg)÷{身長(m)}
(6)熱い飲食物は最小限。例えば熱い飲料は冷ましてから飲む。
(7)肝炎ウイルス感染の有無を知り、その治療(感染者)や予防(未感染者)の措置をとる。
【参考:大腸がんについての情報】
国立がんセンターがん予防・検診研究センター
http://www.ncc.go.jp/jp/kenshin
日本対がん協会
http://www.jcancer.jp
(2007.4.3)
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