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毒キノコ中毒
昨年、食用のスギヒラタケを食べて、急性脳症を起こし死亡する症例が続出し、話題となりました。
厚生労働省の統計では、59人が急性脳症を発症し、19人が死亡しています。スギヒラタケと急性脳症の関係は、現在も不明で、研究が進められています。スギヒラタケは日本では名前がついているもので3000種類、名前がついていないものと含むと数千種類あるともいわれるキノコですが、食用、毒キノコを問わず、その成分は、まだまだ謎に包まれた部分があるのが実情です。
毒キノコ中毒は、中毒症状により次の3つに大別されています。

<胃腸炎型>
最も多いタイプで、キノコ摂食後30分から2時間で、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が出現します。普通は数時間後、長引いても2日以内に自然に回復します。しかし、重症の場合は、のたうちまわるような苦悶状態が続き、意識レベルの低下(意識が朦朧とすること)もあります。このタイプの中毒を起こすキノコは、ツキヨタケ、イッポンシメジ、クサウラベニタケ、カキシメジなどがあります。

<コレラ型>
食後6時間から半日で発病しますが、キノコ毒のアマニタトキシンが、まるでコレラにかかったかのような強烈な腹痛を伴う嘔吐のほか、激しい下痢で脱水状態を引き起こします。体力がない小児やお年寄りは、この脱水状態で命を落とすこともあります。その後1〜2日で、こうした症状は治まりますが、一部の患者さんは次第に重症化し、肝臓や腎臓などの内臓機能が破壊され、さらには呼吸困難、ショック状態、昏睡状態に陥り、数日後に死亡することもあります。そして、無事回復できても、肝臓障害などが残ることが多いという、大変恐ろしい毒素です。この毒素のアマニタトキシンは、タマゴテングタケ、ドクツルタケ、コレラタケなどに含まれており、キノコ1本に含まれるアマニタトキシンで十分に致死量に達するといわれています。

<脳症型・神経型>
キノコの種類によって症状の現れ方は異なりますが、視力障害、酩酊(めいてい)状態、狂騒状態になるなど、いずれも神経を障害し、重症の場合には、死に到るケースもあります。
・ワライタケは、幻覚性キノコ類といわれ、摂食後まもなく、笑い、踊り、狂騒状態になります。大量に食べた場合は、意識が混濁することもあります。普通、これらの症状は1日ほどで回復します。
・ベニテングタケやテングタケは、摂食後1時間から2時間で、嘔吐、腹痛、下痢の症状が出現し、次に耳鳴り、めまい、視力障害も生じ異常な興奮状態となります。このキノコ中毒も、半日から1日で回復します。
・ドクベニタケは、摂食後まもなく、悪寒、よだれ、視覚障害などがおこります。軽い場合は半日ほどで回復しますが、重症の場合は意識不明となり、死亡することもあります。
・ドクササコはヤケドタケともいわれ、摂食後1日から1週間ぐらいで発病し、手足にはまるで焼け火箸を押し付けられたような赤い腫れが生じ、激痛に襲われます。そのため、肢端紅痛症と呼ばれています。厄介なことに、肢端紅痛症の激痛は1ヶ月以上続くことが多く、患者は長期にわたって症状に悩まされることになります。

キノコ中毒の場合、摂取した量や、キノコ毒に対する感受性(体質)の違いのため、個人により発病までの時間も異なり、症状も一様ではありません。胃腸炎型やコレラ型中毒を起こすといわれる種類の毒キノコでも、人によっては脳症型中毒の症状をきたすこともあります。
毒キノコ中毒の初期症状と応急処置
昔から特効薬はないといわれる毒キノコ中毒ですが、毒を体内から排出するのが、応急処置の基本です。「胃の感じが通常と違う」「胃がゴロゴロする」「胃の不快感」「胃の膨張感」などの初期症状を自覚したら、胃の洗浄などができる設備の整った医療機関を受診しましょう。
素人判断で、胃腸薬や下剤を服用しないことが大切です。腹を冷やさないようにして、医師の診断を受けましょう。このとき、食べたキノコの残りがあれば、持参しましょう。また、一緒にキノコを食べた人が中毒症状を起こした場合、全く自覚症状のない人も速やかに医療機関を受診されることをお勧めいたします。
応急処置のポイント
初期症状が疑われたら、いち早く、医師の診断を仰ぐことが必要です。また、下痢止めや腹痛止めなどの薬の服用は避けます。
毒キノコ中毒の予防法
福島県保健福祉部健康衛生領域食品安全グループでは、毒キノコ中毒防止のために、知らないキノコは、「(1)採らない(2)食べない(3)人にあげない」の三原則をあげています。東京都や岐阜県ほかの自治体でも、キノコ採りを楽しむために、「知らないキノコは食べない」「毒キノコの俗説を信じない」の2つを呼びかけています。

《一般的にいわれている毒キノコの俗説― (1)から(7)の俗説はみな間違いです》
(1)茎が縦に裂けるキノコは食べられる。
(2)塩漬けにすると毒が消える。
(3)虫に喰われているキノコは食べられる。
(4)ナスと一緒に油で炒めると中毒はおこらない。
(5)色が鮮明なものは毒で、おだやかな色のものは食べられる
(6)煮汁の中に銀のスプーンを入れて黒変するものは、食べられない。
(7)乾燥させれば食べられる。
【毒キノコの特徴】
キノコ名 特徴 間違えられやすい
食用キノコ






ツキヨタケ
夏から秋にブナの枯れ木に重なって生え、短い柄の肉の部分に黒い斑紋がある。ヒダを暗い所で見ると、青白く光る。 ムキタケ、シイタケ、
クリタケ、ヒラタケ
イッポンシメジ 夏から秋に広葉樹林で、主に一本ずつ発生するが、群生することもある。ヒダが薄い桃色。食用との見分けが難しい種類。 ホンシメジ、ウラベニ
ホテイシメジ
クサウラベニタケ 夏から秋に広葉樹林に発生し、食用との見分けの難しさは、名人泣かせともいわれる。傘はネズミ色で、柄は白く中空(内部がから)。 ウラベニホテイシメジ
カキシメジ 地方によっては「キノコ食中毒の御三家の一つ」とも呼ばれる。松林や、松と雑木の混合林に発生する。傘は赤味を帯びた茶色。 ホンシメジ、
マツタケモドキ






タマゴテングタケ 夏から秋に、広葉樹や針葉樹の林に発生。柄の根元に袋状のツボがあるのが特徴。傘の色は種類によって緑、黄、白、黒褐色などがある。
ドクツルタケ 夏から秋に、広葉樹や針葉樹の林に発生。柄の根元に袋状のツボがあるのが特徴。全体が白色で、美しい形をしている。 シロマツタケモドキ、
シロオオハラダケ、
ヒラタケ
コレラタケ 晩秋、スギなどの朽木、捨てられたキノコ栽培用のおが屑の上などに発生。傘の中央が突起している。
ナラタケ、エノキタケ、
センボンイチメガサ
と類似









ワライタケ
(ヒカゲタケ)
春から秋に、牛馬の糞や畑に発生。傘が半球型で、傘のふちが、ギザギザのレース状になっている。
ベニテングタケ 夏から秋に、広葉樹や針葉樹の林に発生。特に白樺などカバノキ属の樹下に多い。赤色の傘に白色のイボが多数つき、一見しただけで、毒キノコの風格が感じられる。タマゴタケと間違われることが多い。
テングタケ 夏から秋に、広葉樹や針葉樹の林に発生。傘は灰褐色で、表面の白色のイボが多数あり、ヒダは白色。柄の基部が球根状に膨らんでいる。 ガンタケ
ドクベニタケ 夏から秋に、広葉樹や針葉樹の林に発生。傘は平らで、中央が窪む。柄は白色。
ドクササコ 秋、笹やぶや、竹林、カラマツ林などに列になって発生。柄を裂くと、中空になっている。カヤタケと間違うことが多いが、カヤタケの柄の中味は充実している。
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