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トップページ最新医療情報 > 年末年始、万が一のときの「応急処置」編〜知っておきたい「改定後の救命蘇生法」のポイント〜
年末年始、万が一のときの「応急処置」編
年末年始は救急車の出場件数が急増します。東京消防庁では、12月の広報テーマとして「年末年始の救急事故をなくそう」を掲げ、予防を呼びかけています。この時期に救急要請が急増する要因としては、冬季に流行するインフルエンザなどの病気のほか、忘年会の急性アルコール中毒、餅による窒息、入浴中の事故があげられます。身近な人がこうした事故で心肺停止状態になったときは、救急車を呼ぶことが大切ですが、それより先に救命処置を施すことができれば、命を救う確立が高くなります。緊急時、特別な資格がなくても市民がおこなうことができるのが一次救命処置法です。2006年、財団法人日本救急医療財団は「わが国の新しい救急蘇生ガイドライン(骨子)(BLS)」を策定しました。従来のガイドライよりも、一次救命処置などの救命処置がより効果的に実施できるように改定されています。冬場の救急事故や病気が多いシーズン、改定のポイントを知るだけでも、万が一の備えになるでしょう。
胸骨圧迫(心臓マッサージ)を重視した改定に
一次救命処置(Basic Life Support*BLS)は、心肺蘇生法(Cardiopulmonary Resuscitation*CPR)と、AED(Automated External Defibrillator*自動体外式除細動器)」による除細動、のどに食べ物などが詰まり異物で窒息し心停止になるのを防ぐために異物を取り除く「気道異物除去」の3つの救命処置のことです。心肺蘇生法は、心臓マッサージをするための胸骨圧迫と人工呼吸をあわせておこなうことですが、人工呼吸は省略されることもあります。
今回の改定では、心肺蘇生法の胸骨圧迫(心臓マッサージ)をより重視し、胸骨圧迫を的確におこなうことを強調しています。そのため、従来の指針で示された「循環のサイン」(息、せき、動きなどを確認することで心臓が動いているかどうかを判断する)を不要とし、敏速な胸骨圧迫の処置を指導しています。また、感染病などの懸念から口対口の人工呼吸をちゅうちょする場合には、人工呼吸を省略して、胸骨圧迫をします。
これまで15:2だった胸骨圧迫と人工呼吸の比率も、30:2と胸骨圧迫の回数が倍になりました。さらに、連続3回だったAEDによる電気ショックの回数を1回とし、AEDのあと、すぐに胸骨圧迫をおこないます。このように、いち早く心肺蘇生法にとりかかり、絶え間なく胸骨圧迫を施すように改定されました。
また、子どもに対する処置も、胸骨圧迫と人工呼吸の回数を成人と同じに改定することで、市民が戸惑うことなくスムーズに救命活動が施せるように配慮されています。
乳児と小児の場合は、119番通報よりも心肺蘇生を優先
心肺蘇生では、8歳以上を「成人」とし、1歳から8歳未満を「小児」、12カ月の1歳未満までを「乳児」としています。心肺蘇生がしやすいように、子どもと成人との違いを少なくしていますが、大きく異なるのは次の4点です。
(1)119番通報よりも、心肺蘇生を優先します。
小児と乳児は、119番通報とAEDの手配よりも優先して、2分程度の心肺蘇生をおこないます。これは、子どもは気道閉鎖や呼吸障害などの低酸素状態が原因で心肺停止になるケースが多いため、何よりも低酸素状態を改善する処置が必要なためです。
(2)胸骨圧迫の位置、方法、深さなどが若干異なります(図1参照)。
(3)乳児には、AED(自動体外式除細器)を使用しません。
(4)乳児への人工呼吸は「口対口鼻呼吸法」でおこない、気道異物除去も異なります。
市民がおこなう救急処置の主要変更点(図1)
市民
改正後 改正前
年齢 成人 8歳以上 8歳以上
小児 1〜8歳 1〜8歳
乳児 1歳未満 生後28日〜1歳
新生児 - 生後28日未満
心肺蘇生 対象 普段どおりの息をしていない 循環のサインなし
人工呼吸 成人 1秒間かけて、胸が上がる程度 2秒間で500〜800ml(5秒に1回)
小児 1〜1.5秒間で軽く胸が上がる程度(3秒に1回)
乳児
新生児 - 1秒間で軽く胸が上がる程度(1〜2秒に1回)
胸骨圧迫回数 成人 1分間に約100回のテンポ 1分間に約100回のリズム
小児
乳児 1分間に少なくとも100回のリズム
新生児 1分間に約120回のリズム
胸骨圧迫強さ 成人 4〜5cm胸が沈む程度 3.5〜5cm胸が沈む程度
小児 胸の厚さの1/3が沈む程度 胸の厚さの1/3が沈む程度
乳児
新生児 -
胸骨圧迫と人工呼吸の比率 成人 30:2
(1人法、2人法とも同様)
15:2
小児 5:1
乳児
新生児 - 3:1
AED 連続実施回数 1回 適応があれば3回連続
対象年齢 1歳以上 8歳以上
実施後の対応 直ちに胸骨圧迫再開 心電図解析後に循環のサインの確認
異物除去 成人 背部叩打法、腹部突き上げ法 背部叩打法、ハイムリック法
小児 背部叩打法、腹部突き上げ法 背部叩打法
乳児 背部叩打法、腹部突き上げ法
新生児 -
一次救命処置の流れ
成人の「心肺蘇生法」の手順
倒れている人(傷病者)を発見した時は救命活動の前に、傷病者と自らの安全を確認します。安全が確認されたら、手順に従い、行動します。

(1)意識のある・なしを見る
やさしく肩をたたきながら大声で、「もしもし」「大丈夫ですか?」などと呼びかけます。知人なら名前でもいいでしょう。反応が認められない場合は、「反応(意識)がない」と判断します。突然、心停止した直後に痙攣することがありますが、意識がない状態なので勘違いしないよう気をつけてください。
(2)助けを呼ぶ
傷病者が無反応ならば、「誰か来てください」などすぐに助けを呼びます。
(3)119番に通報してAEDの手配をする
近くにいる人に119番通報を頼みます。近くにAEDがある場合は、持ってくるように頼みます。近くに人がいない時は、自分で119番通報とAEDの手配をします。電話がないときは、傷病者から離れても119通報をします。付近にAEDがあることを知っている場合は、取りに行きます。
(4)気道を確保する〜「頭下げて・あご上げて」
気道を確保します。あとに続く胸骨圧迫(心臓マッサージ)は、気道が確保されて初めて有効にはたらきます。
気道確保のためには、仰向けにした傷病者の顔の横の位置に座ります。片手で傷病者のおでこを押さえて頭を軽く反らせながら、もう一方の手の指先をあごの先端の硬い骨の部分に添えて持ち上げます。傷病者の頭が下がり、あごの先端が上になってのけぞるような形になります。これで、のどの奥が広がり、空気(息)が入りやすくなります。「頭下げて・あご上げて」と記憶すると覚えやすいでしょう。
(5)「見て・聞いて・感じて」呼吸を確認
呼吸を確認します。呼吸をしていれば、傷病者の胸が上下します。傷病者の胸の動きを「見て」、口元に耳を近づけ呼吸音を「聞き」、吐息はほおで「感じて」確かめます。約10秒経過して、呼吸の状態がわからない時は正常な呼吸はないものと判断します。
心停止直後には、しゃくりあげるように途切れ途切れに起こる「死戦期呼吸」がみられることがあります。死戦期呼吸は「心肺停止」とみて、心肺蘇生を始めます(※反応はなくても、普段通りの呼吸があれば、傷病者の症状に注意しながら、救急隊の到着を待ちます)。
(6)人工呼吸は2回まで
「口対口人工呼吸」をおこないます。気道確保の姿勢のまま、息を吸い込んでから自分の口を傷病者の口に当て、空気が漏れないように息を吹き込んでいきます。傷病者の鼻から吹き込んだ息が漏れ出すのを防ぐために、おでこを押さえている手の親指と人差し指で、傷病者の鼻をつまみます。横目で見ながら、傷病者の胸が軽く持ち上がるぐらいの息の量を約1秒間かけて入れます。一度、口を離し、傷病者の息が自然に出るのを待ち、2回目の人工呼吸をおこないます。
息を吹き込んだ時に、自然と胸が上がるのが理想ですが、2回とも上がらなくとも人工呼吸は2回までとします。
人工呼吸に抵抗感がある場合は、人工呼吸を省略して胸骨圧迫(心臓マッサージ)をします。
(7)胸骨圧迫をおこなう
心臓を押す場所は、胸の左右のまん中にある胸骨の下半分です。この場所を探すには、乳頭と乳頭を結ぶ線のまん中を目安にするとよいでしょう。この場所に片方の手のひらの基部をあて、その手のひらの基部に、もう一方の手のひらの基部を重ねます。胸骨圧迫には、力を集中することが大切です。そのためには、重ねた両手の指を組むのもよいでしょう。手のひらの基部に垂直に体重がかかるように、肩は押す部位のま上にして両肘をまっすぐに伸ばした姿勢をとります。圧迫の強さは、傷病者の胸が4〜5cm沈む程度です。指や手のひら全体に力を加えると肋骨が圧迫されるので、手のひらの基部だけで的確に圧迫します。1分間に約100回の速さで、30回連続でおこないます。
「強く・早く・絶え間なく」が大事なポイントです。圧迫を繰り返すうちに、手が正しい位置からずれたり、気道確保の姿勢が崩れることがあるので注意しましょう。
(8)心肺蘇生(胸骨圧迫連続30回と人工呼吸2回)を継続する
心肺蘇生は、連続30回の胸骨圧迫と人工呼吸2回を組み合わせて、絶え間なく継続して行います。胸骨圧迫の30回連続は目安です。胸骨圧迫は思いのほか、体力を使い、疲労してくると力が弱くなり、テンポも遅くなります。意識的に強く、早く、圧迫を続けます。協力してくれる救助者がいるときは、2分を目安に、交代します。
(9)心肺蘇生をいつまで続けるか
心肺蘇生中に、傷病者が声をだす、動くなど通常のように呼吸を始めたら心肺蘇生を中止します。傷病者の様子を見守りながら、救急隊を待ちます。もし、また、呼吸をしなくなったら、心肺蘇生を再度試みます。救急隊が到着しても、即座に心肺蘇生を中止せずに、救急隊員の指示に従います。
小児(1〜8歳未満)の「心肺蘇生法」の手順
(1)呼びかけて、意識の有無、反応を確認する。
(2)大声で助けを呼ぶなど、周囲の注意を喚起する。近くに誰もいないときは、まず、2分間、心肺蘇生をおこないます。
(3)気道の確保をします(頭下げて・あご上げて)。
(4)呼吸の確認をします(見て・聞いて・感じて)。
(5)口対口の人工呼吸を2回おこなう。
(6)胸骨圧迫(心臓マッサージ)をおこなう。
「圧迫する部位」、「連続30回の圧迫の回数」と「1分間に100回の速さのテンポ」は成人と変わりませんが、押す強さ(深さ)は胸の厚みの3分の1を目安とします。十分に沈みこむよう、強く押します。圧迫は、両手ではなく片方の手のひらの基部でもかまいません。
(7)心肺蘇生(胸骨圧迫連続30回と人工呼吸2回)を続けます。
(8)誰もいない場合は、2分間の心肺蘇生をしたあと、初めて119番通報とAEDを手配します。
一連の救助活動の最中に、誰かが近づいてきたときは、どの段階でも救助活動を中断して、その人に119番通報とAED手配を頼みます。
反応がないときは、専門スタッフに引き継ぐまでは心肺蘇生を継続します。
1歳未満の手順
(1)呼びかけて、意識の有無、反応を確認する。
(2)大声で助けを呼ぶなど、周囲の注意を喚起する。近くに誰もいないときは、2分間、心肺蘇生をおこないます。
(3)気道の確保をします(頭下げて・あご上げて)。
(4)呼吸の確認をします(見て・聞いて・感じて)。
(5)人工呼吸は2回ですが、口対口鼻人工呼吸法をします。これは、救助者が、乳児の口と鼻を同時に自分の口に含んで息を吹き込む方法です。
(6)胸骨圧迫(心臓マッサージ)をおこなう。
「連続30回の圧迫回数」「1分間に100回の速さのテンポ」「胸の厚みの3分の1が目安の押す強さ(深さ)」は小児と同じです。圧迫部位が異なり、乳児の両乳頭を結ぶ線のまん中の少し足側です。圧迫は2本の指でおこないます。
(7)心肺蘇生(胸骨圧迫連続30回と人工呼吸2回)を続けます。
(8)近くに誰もいなかったときは、2分の心肺蘇生を試みたあと、119番通報をします。1歳未満の乳児にはAEDは使用しません。救助活動の最中に、誰かが近づいてきたときは、どの段階でも救助活動を中断して、その人に119番通報を頼みます。反応がないときは、専門スタッフに引き継ぐまでは心肺蘇生を継続します。
AED(除細動器)の使用
AED(除細動器)は、2004年7月から一般市民にも使用が認められ、公共の場所への設置数も増えています。改定では、1歳未満にはAEDは使用しません。
成人では、心疾患で意識を失う人は多く、なかでも「心室細動」の異常が原因の人が7、8割ともいわれています。心室細動は早期に除細動を施すことで、もとの心臓の動きを取り戻すことができます。この除細動は1分遅れるごとに7〜10%ずつ救命率が下がるため、救急車の到着を待っていては間に合わないことがあります。
突然、意識を失い心肺停止となった傷病者に遭遇したときは、身近にAEDがあれば、使用しましょう。機種によって細かい操作は異なりますが、AEDが指示を出してくれますので、その指示に従えば大丈夫です。講習会もあり、ビデオを見ながら、組み立ての式のマネキンキッドで実際に心肺蘇生法とAEDの使用を体得できるパーソナルトレーニングキッドもあります。
気道の異物除去
市民による異物除去の方法としては、腹部突き上げ法(ハイムリック法)と背部即打法が推奨されています。腹部突き上げ法は、後ろから傷病者の身体を抱えるように腕をウエスト近くに回し、片手で握りこぶしを作り、みぞおちにあてます。もう一方の手で、握りこぶしの手を握り、すばやく内上方向に向かって圧迫するように押し上げます。
背部即打法は、傷病者の後方から手のひらの基部で左右の肩甲骨のまん中あたりを強く、連続して押します。原則として、腹部突き上げ法を優先しますが、傷病者の体型や姿勢など、状況で判断します。腹部突き上げ法は腹部の内臓を傷めることもあるので、異物を除去しても医師の診断をうけましょう。救急隊員が駆けつけたときには、その旨を伝えます。
ことに、高齢者は肉や餅などの食べ物が詰まって気道閉塞になるケースが多く、食事中に、突然しゃべらなくなったり、のどに両手をあてるサインをするときは気道異物による窒息を疑います。
高齢者の食事中の窒息を予防するには、次の点に注意してください。

(1)義歯の場合は、特に食物をこまかく切り、ゆっくり入念に噛む。
(2)かんだり飲み込んだりする際には、笑ったり話したりするのを避ける。
(3)過度の飲酒を避ける。

妊婦と乳児は、腹部突き上げ法はおこなわずに背部即打法をおこないます。異物が取れるか反応がなくなるまで続けます。
【参考:救急蘇生法について】
日本赤十字社 http://www.jrc.or.jp/
広域災害救急医療情報システム http://www.wds.emis.or.jp/
(2007.12.17)
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