時事通信出版局

つぶやく編集者

嫌いなことばたち②

COLUMN vol.2

ぼくが嫌いな言葉は「会社名+さん」。
ぼくは長い間通信社に勤めています。ときどき取材先なんかで「会社名+さん」で呼ばれます。
取材先にこう呼ばれると敬して遠ざけられていると考えていいです。
ズバリ、名前を呼び捨てで呼んでくれる人がネタをくれる。
「お名前様とご住所様を書き込んでください」
と言われてぶったまげたことがある。
「普通名詞+様」ですね。
ここまでくると敬して馬鹿にされている気がしてくる。


悩ましい国語辞典」という本を出し、結構売れています。
著者の神永曉さんは「日本国語大辞典」という13巻もある日本最大の国語辞典の編集者。「広辞苑」は全1巻だからこの辞書は広辞苑の13倍偉い(かな?)。
日本語について書いた本は「その使い方はダメ!こっちが正しい!」というお説教調が多いが、神永さんは悩んでいる。日本国語大辞典に書いてある、古代から現代までの言葉の用例を知り尽くし、言葉は時代ともに揺れているのをよく知っている。揺れることばの中で悩んでいます。
誤用を一刀両断にしない。寛容なんです。
でも神永さんにも嫌いなことばがあるようです。
例えば「つーか」。

「面白い映画だったよね」「つーか、前の席の人の頭がじゃまでさァ」などと言われると、会話がかみ合わないと感じるだけでなく、自分の発言が無視されたような気にさえなるであろう。
また、会話の中でこの語が使われた場合、「この曲はきれいつーか(っていうか)、泣けるつーか(っていうか)」などのように、はっきりとした自分の意見を持たない(持てない)幼い人間という印象を相手に与えかねない。
結局のところ、「つーか」だけでなく「うざっ」にしろ「は!?」にしろ、嫌われるのは、その言い様によって使う側の人間性を感じさせてしまう語であるからかもしれない。(神永曉『悩ましい国語辞典』)


神永さんは辞書編集の現場を舞台にした三浦しをんさんの小説『舟を編む』の主人公「馬締さん」のように真面目で温厚な人です。
でも、神永さんはちょっと怒っています。
ぼくもそれに共感します。
真剣に話をしている時に、「つーか」「うざっ」「は!?」と言われたら、家に帰って寝たくなります。

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