時事通信出版局

つぶやく編集者

「流しの公務員」仕事の流儀②

COLUMN vol.5

流しの公務員の冒険』の著者、山田朝夫さんは官僚っぽくない。ソフトでユーモアがあります。でも公務員として理想的な仕事を成し遂げている。市民からも県医療界も見放され「死人病院」と呼ばれた市民病院を再建、新築しました。町を二分したバイパスルート問題を住民の全員一致で解決しました。

日本のリーダーはトップダウンが好きですが、彼は決してそれを使わない。市民参加の会議を開く。会議をとてつもなく面白くする。市民の議論は白熱する。自らは特定の意見を持たず、誘導せずに、市民が結論を出すのをただ待つのです。

会議で得た市民の意向を「形」にする手法もすごい。医師も看護婦も議員も設計者も建築会社も巻き込み、理想の病院を建てます。「風神のようだ」と巻き込まれた職員は話します。「巻き込まれて本当に楽しかった」とも…。

市民の会議の準備、医師とのコミュニケーション、竣工式の演出…。すべてにこだわります。病院再建をやっているのに自分が医師でないのに矛盾を感じ、50を過ぎて医師になろうと、息子さんの「数llB」の問題集に取り組み始める(結局は老眼で断念しましたが…)。「仕事とは手を尽くすこと」だと教えてくれます。

吉野弘の詩に、サラリーマンは「他人の時間を耕作する者」という表現があります。上司の顔色をうかがったり、飲んで人事のことを話したりするのは勤め人の性(さが)です。でも、山田さんは「人事にとらわれるような人生だけは歩みたくなかった」といいます。「組織というものは一度できてしまうと、その目的よりも組織自体を維持発展させる方を優先させるという『本末転倒』を起こします。そして『人事大好き人間』はその片棒を担ぎがちです」。

組織に取り込まれずに、組織の中で自分だけの仕事をする。この本にはその方法が詳しく書いてあります。

COLUMN vol.4