2019.02.25

合格願書から学ぼう!

徹底研究! 1 9 の合格願書 ココがスゴイ!

それでは,いよいよここからは,実際に合格を勝ち取った先輩方の願書について見ていきます。ただし,気をつけてもらいたいのは,これらはあくまでも「見本」であるということ。願書の書き方は,人それぞれで,特定の「型」があるわけではありません。ここで紹介した願書の優れたところから学ぶとともに,良くないところは「他山の石(他者のよくない点から学ぶこと)」として,それぞれ最善の願書を作り上げていくための材料としてください。

※ 願書は合格者が実際に提出したものを,編集部が書き写したものです。個人情報等の一部を変更しており,また,筆跡は合格者本人のものではありませんのでご了承ください。

※ 願書の記入欄の一部は空欄のままになっています。本番では必要なすべての欄に記入し,提出するようにしてください。

※ 1次試験後に合格者のみ記入する「面接票」も収録しています。

※ 願書のフォーマットは変更になる可能性がありますのでご注意ください。

FILE 01 「努力家だけど,頑固なので気を付けたい」。 冷静な自己分析で克己心と謙虚さをアピール! 試験官に「この子は将来伸びる」と思わせるお手本願書!

志望自治体:北海道・札幌市
校種・教科:小学校
札幌生まれ,札幌育ち。東京の大学に進学したが,地元での受験を志望。高校では陸上部のキャプテン,大学でも短距離のブロック長をつとめたスポーツマン。

ADVICE 長い一文が,読み手を混乱させている。

2文目の「教員として,子どもたちには社会科の~」という一文は長い印象。長い文章は情報量が多く,読み手の頭の中を混乱させるので,できる限り短くしていきたい。この一文の場合は「~手がかりとしていきます。そしてこれらの興味・関心を学びの原動力としながら~」といったように,短く区切っていくと,情報が整理され,読み手にすっきりと伝えられる。

GOOD 教育実習で感じた「難しさ」から学んだことを記述。

 自分の能力をアピールしたいと,自身の経験や実績,評価されたことなどを,ありったけ並べる人が多いが,この受験生は,教育実習で,自身が感じた指導の「難しさ」に言及。さらにその上で,そこで何が大切であると感じたかを記述している。
 教員採用試験は,「今」の受験生の能力ではなく,将来性を見ている。この記述は,書き手が教師として壁にぶつかった際にも克服していく力を備えていることをうかがわせるもので,高い将来性を感じさせる。

ここに注目! 「長所」と「短所」を表裏一体で記述。「メタ認知」できていることを強烈アピール!

自分自身が述べる長所は,下手をすると単なる「自慢話」になり,傲慢な印象になりかねない。この受験生の場合は「決して諦めず努力し続ける」ことを自身の長所としているが,これは「我の強さ」や「協調性の欠如」の裏返しでもある。ところが,続く「短所」の記述で,自らを「頑固」と述べた上で,「周囲の助言を聞いていく」とフォローしている。長所と短所を表裏一体で記述することで,自らを客観視(メタ認知)して,成長していくことができる人物であることを見事にアピールしている。

FILE 04 4方向から斬りこむ「志望理由」が,グッド! 試験官に「詳しく話を聞きたい」と思わせる 仕掛けの数々は,面接で開花する!

志望自治体:千葉県・千葉市
校種・教科:小学校
中学校から吹奏楽を始め,大学では吹奏楽団とアカペラサークルなどに所属。音楽には自信あり。幼稚園から高等学校の教員免許状を取得したが,6年間という長い期間,子供に携わりたいと小学校を志望。

ADVICE 「確信する」は,思い込みが強く,傲慢な印象を与える。

 全体的に,非常に情熱的で説得力あふれる願書になっているが,この「海外生活と音楽で学んだ経
験はこれからを生きる児童を育てる際に役立つと確信する」という一文は,表現を再考したい。この
願書を読むのは,百戦錬磨のベテランの教員や関係者だ。そうした人たちに対して,まだ現場経験のない受験生の経験が役立つと「確信する」というのは,傲慢な印象を与える。「役立てていきたい」
「生かしていく」など,質問に正対した上で,身の丈に合った表現に修正すると良い。

ここに注目! 4つの視点で志望動機を記述。バランスがよく, 志望理由に非常に説得力がある。

 志望動機は,大きく2つの軸で書くことができる。1つは,「過去」にこのような素敵な経験をしたから,もしくは,「将来」このような教育を実践したいから教師を志したという「時間軸」。もう1つは,自治体のここに魅力がある,もしくは,ある教育をこの自治体でやってみたいという「場所軸」だ。この2つの軸を交差させると,右のような座標になる。
 志望動機が1つの場合,この座標でカバーできる範囲は極めて狭い。ところが,この受験生は4つの志望動機を記述し,座標の4つのエリアを広くカバーしている。試験官の目には,教職への熱意をバランス良く兼ね備えているように映るはずだ。

GOOD 面接で「聞いてほしい」アピールポイントが仕込んである。

P4で述べた通り,願書は,面接の際に面接官が手元に置いて,書かれている内容から質問をする。その際,面接官が聞きたくなるのは,ほかの人の願書にはない,その人の個性を示した記述についてだ。
 この受験生の場合,幼稚園から高等学校,特別支援学校の教員免許状を持っていることを,さりげなく記載している。この記述を読んだ面接官は,当然,たくさんの免許状をもっているのに,なぜ小
学校を志望するのかを質問したくなるだろう。この質問に対する答えを周到に準備しておけば,面
接の際に効果的に自己アピールができるというわけだ。