2018.11.22

スイスイ分かる! 「新学習指導要領」スーパーガイド 第11回「体育科・保健体育科」

第11回テーマ「体育科・保健体育科」

大改訂となった新学習指導要領(2017年3月告示)。膨大な内容の中から、試験に出るポイントを12のテーマに分け、専門家が分かりやすく解説していきます。

体育科・保健体育科の概要をつかむ

 まずは、小学校、中学校の学習指導要領解説(平成29年告示)体育編および保健体育編を読み、新指導要領の概要をつかんでおきましょう。第1章(総説)と第2章(体育科または保健体育科)をよく読み、改訂の方向性を理解しておくことが大切です。そのうえで、各学年や各分野(体育・保健)の目標と内容を読み進めていくとよいでしょう。

体育の見方・考え方

 新学習指導要領では、教科の特質に応じて物事を捉える視点や考え方を表すものとして「見方・考え方」という概念が導入されました。それは、児童生徒が各教科をなぜ学ぶのか、学習を通じてどのような力が身に付くのかといった、教科を学ぶ本質的な意義を明らかにするためです。
 「体育の見方・考え方」とは、生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現する観点を踏まえ、体力の向上に果たす役割の視点や自己の適性に応じた多様な関わり方等を学んでいくものです。そのためには、運動やスポーツの価値や特性を知り、将来、自分たちがどのように関わっていくのかを考えさせていく必要があります。
 「豊かなスポーツライフ」という観点から捉え直すと、学校を卒業した後も末永く運動に親しんでいける人を育成することが目指されているといえます。それゆえ、運動やスポーツを通じ、楽しさや喜びを味わうことや体力の向上に寄与し得ることを踏まえ、「する、みる、支える、知る」という多様な関わり方が期待されているのです。
 この「する、みる、支える、知る」とは、児童生徒が運動やスポーツを「すること」だけでなく「みること」「支えること」「知ること」など、自分の適性等に応じて、運動やスポーツと関われるようにすることを意図したものです。
 学習指導要領・解説において次のように示されていますので、体育の見方・考え方を整理しておきましょう。

保健の見方・考え方

 「保健の見方・考え方」とは、心と体を一体として捉え、生涯を通じて心身の健康を保持増進するための資質・能力を育成するためのものです。
 グローバル化や情報化が加速するとともに、児童生徒の置かれている社会環境も大きく変化しています。それゆえ、健康課題やストレスに適切に対処できる力など、心身の健康の保持増進を図るための行動を選択し、健康に関する課題を適切に解決したりすることが必要です。
 保健は、理科、技術・家庭科、特別活動、道徳等の知識と関連性が高いため、積極的に教科等横断的な視点での展開が望まれます。
 学習指導要領・解説においては、次のように示されていますので、保健の見方・考え方を整理しておきましょう。

体育と保健の関連

 からだと心を育む中心的な役割を担う「体育」と「保健」において、関連性を生かした指導が求められています。保健で学ぶ、「からだ」「健康」「こころ」「環境」等の諸科学は、体育科・保健体育科の基礎であり、体育と保健の連携はとても大切です。単元によっては関連をもつことが難しい内容もありますが、多くは双方を補完する内容といえるでしょう。

資質・能力の3つの柱と体育科・保健体育の目標

 新学習指導要領では、育成を目指す資質能力として「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱が示され、すべての教科の目標に具体化されています。
 体育科においては、全ての児童生徒に運動やスポーツの楽しさを味わい、喜びを体験させることが目指されています。その経験や体験を通して、生涯にわたって心身の健康を保持増進し、豊かなスポーツライフの実現の基礎となる資質・能力を養うのです。具体的には次のように目標で示されています。

 体育では、自己の記録に挑戦したり、仲間と協力・競争したりする楽しさがあります。また、できなかったことができるようになる達成体験や多様な動きができるようになる動きの汎用も、楽しさの一つでしょう。このように体育において、肯定的な体験を少しずつ積み重ねていくことで、運動やスポーツが好きな児童生徒を増やせる可能性が高まります。
 今回の改訂では、オリンピック・パラリンピックに関する指導の充実も示されています。学習を通して、目標に向けて努力すること、仲間との協力や相手を敬うこと、そして活動に求められる規範意識の大切さなどを伝えていくことが望まれます。

体育科・保健体育科におけるアクティブ・ラーニング

 アクティブ・ラーニングは、主体的で協同的な学習場面が基礎になります。実のある話し合いにするために、教師は的確なテーマを設定しましょう。話し合いが進まないときは、児童生徒が課題を見つけ、解決に向かうように促すことが必要です。積極的に発言できない児童生徒がいる場合には、ホワイトボードやICT機器の活用をお勧めします。たとえば、記録やICT機器の操作等の役割を決めて行うと、発言が苦手な児童生徒でも、次第に主体性をもって発言できるようになります。
 話し合い活動は、授業のねらいを達成するための一つの手段です。考えたことを他者に伝えたり、意見をすり合わせたりするなかで、問題解決に近づけていくとよいでしょう。単に仲間の言うことを無条件に聞き入れて同意することではなく、考え方や意見にひそむ問題点を話し合う認識に立っていることが大切です。
 アクティブ・ラーニングの方法は多様ですので、目の前の児童生徒の実態に即し、工夫していくとよいでしょう。

著/大矢 隆二(常葉大学教育学部 教授)

次号では「小学校 英語・外国語活動」を解説します。

※ ※内容は変更になる可能性があるのでご了承ください。