2019.02.01

絶出 いじめ・不登校・児童虐待 コレだけポイント

毎年、絶対に出る3大テーマです!

よく聞く言葉を「分かったつもり」になってませんか?

 今号の特集は,「いじめ」「不登校」「児童虐待」を取り上げます。これらは,教員採用試験で毎年必ず問われる「3大テーマ」。新聞やテレビ,ネットのニュースでもよく取り上げられているので,学校現場でも対策が求められている問題・課題であることを知っている人も多いでしょう。
 しかし,実は,よく耳にしている言葉だからこそ注意したいことがあります。それは,「知ってるつもり」になり,対策が後手に回ってしまうことです。
 皆さんは,これらのテーマについて,どう向き合えばよいのか知っていますか? いじめは「よくない」,不登校は「助けが必要」,児童虐待は「許されない」といった,感情的で漠然とした理解では,一般人と変わりません。教員採用試験では,これらのテーマについて,教師としての正確で専門的な知見と知識を備えているかが,問われるのです。

「法律」「データ」「対応」が組み合わさって 問われます!

その「知見・知識」とは,「法律」と「データ」,そして教師としてとるべき「対応」の3つ。試験では,「3大テーマ」×「3つの知見・知識」を組み合わせたり入れ替えたりした問題が出るので,やっかいです。そこで本特集では,3つのテーマの情報を徹底的に整理。絶対に押さえておきたい「コレだけポイント」にまとめました。合格に必須の知識ですので,完全に理解した上で本番に臨んでください。

まずは挑戦! 「いじめ」理解度チェック

 最初に,以下のリストで,自分の理解度チェック! チェックが入らなかった項目は,以降の解説でしっかりと学習していくようにしましょう。

コレだけポイント① 「いじめ」の基礎知識

いじめには,「生命の危険」がある

 2011年10月,滋賀県大津市立中学校の男子生徒が,いじめを苦に自殺するという悲劇的な事件が発生しました。この事件では,学校や教育委員会の対応をめぐって,全容解明に後ろ向きだという批判が巻き起こりました。
 この事件の後,文部科学省はいじめ問題への対応を強化。国会でもいじめ防止について議論され,2013 年6月に与野党の議員が共同で提出した「いじめ防止対策推進法」が制定され,同年9 月に施行されました。いじめ防止について定めた法律ができたのは,これが初めてです。
 この法律の第1条には,法律の目的が示されています。ここでは,いじめは,児童生徒心身の成長や人格に影響を与えるだけでなく,ときには,生命を危険にさらす行為であると明記されています。面接や論作文などで,いじめについての認識を問われた際には,この条文を踏まえた上で,いじめを絶対に許さないという姿勢を示すことが必要です。

いじめには「定義」がある

 いじめ防止対策推進法は,いじめに対する学校や教員の責務や基本的な対応を定めています(→ P.12)。では,どのような行為がいじめに該当するのでしょうか。学校現場で認識を一つにして対応できるよう,同法第2条では,「いじめの定義」を規定しています。筆記試験はもちろん,面接や論作文でもよく問われる基本中の基本の知識ですから,できればこの条文は暗記してしまいたいところです。

コレだけポイント② 「いじめ」のデータ

いじめの「認知」件数は激増している!

 いじめの基本知識を押さえたら,次は,いじめの実態を統計を通じて見ていきます。いじめについては,毎年秋に発表される「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で統計が発表されています。中でももっともよく問われるのは,下のいじめの認知件数の推移についてです。細かな数字ではなく,数値の増減といった傾向が問われるので,押さえておきましょう。
 最新の統計によると,2017(平成29)年度のいじめ認知件数は前年度比9万1235 件増の41 万4378件です。2014(平成26)年度以降,いじめの認知件数は毎年急激に増加する傾向にあります。ただし,これはあくまで学校が「認知」した件数です。この背景には,いじめを防ぐために,文部科学省が学校に対し積極的ないじめ認知をうながしていることが影響しています。

特に小学校低学年で認知件数が増えている

 いじめの認知件数を学年別に見てみると,小学校2年生が6万2546件で最多になっています。実は,2015(平成27)年までは,中1が最多という傾向が続いてきましたが,近年は低学年でのいじめ認知件数の増加が目立つ傾向にあります。これは,これまではいじめと認知してこなかったようなトラブルも,積極的にいじめと認知するようになったためと考えられます。
 一方,小2から小6まではいじめ認知件数が減り続けるものの,中1で急増するという傾向は例年通りでした。これは,小学校から中学校に上がり環境の変化についていけなくなる「中1ギャップ」の影響と見られます。

精神的ないじめが圧倒的に多い

 いじめの態様に目を向けると,「冷やかしやからない,悪口や脅し文句,嫌なことを言われる」といった精神的ないじめが62.3% と突出して多いことが分かります。加えて,最新統計として押さえておきたいことは,「パソコンや携帯電話等でひぼう・中傷や嫌なことをされる」が3.0% の1万2632件で過去最多となったことです(高校ではいじめの態様として2番目に多い)。
 傾向を把握するとともに,スマホやSNSなどの使い方の指導,「情報モラル教育」などの重要性も,改めて確認しておきましょう。