2018.11.01

File03 宮崎 慎矢(みやざき・しんや) 先生 相模原市立橋本小学校

「笑って過ごすことを大切にしたい」
その言葉の通り、
授業中の宮崎先生の写真は、
どれもこれも笑顔です。

子どもたちにとって宮崎先生は、どんな先生だと思いますか?

「ずっと笑っている先生」だと思います。ただ、1学期のうちは、「怖い先生」だと思っている子も多かったようです。というのも、本校では1学期が始まってすぐの時期に運動会があり、その練習時にかなり厳しい指導をしたからです。

私は、学校行事などで「学年集団」に対するときは、するべきこと、ダメなことを厳しく指導するようにしています。学校行事の目的には、掲げた目標に向かって全員が協力・努力して、達成感を得るというものがあります。そのためには、厳しい指導も必要だと考えるからです。

一方、普段の授業や個別に対応する場面などでは、大体、笑っています。日常生活の一部である授業が楽しいものでないと、子どもたちが辛くなってしまうと思うからです。もちろん、授業中、問題に向き合うときやノートをとるときなどは、きちんと集中するよう指導しますが、それ以外の時間は笑っていたい。担任する学級の子どもたちは、「笑って過ごすことを大切にしたい」という私の姿勢にすぐに気付いてくれ、笑ってばかりの学級になりました。

日頃接する機会が少なく、運動会指導のときの「怖い先生」イメージが残っていた他学級の子も、各学級の担任が入れ替わって指導する「特別の教科 道徳」の授業などを通して、普段の私が分かってきたようで、2学期に入った今では「先生っていつも笑っているよね」と言われるようになりました。

「笑う」のは意識してのことですか?

意識している部分もあります。元々、よく笑いよく喋るタイプだったのですが、初任者の頃は「先生らしくしなければいけない」という気持ちが強く、今のようには笑わず、全てにおいて細かく厳しい指導をしていました。「指導すべきこと」が1番にあり、「指導される子どもの気持ち」を考えられていなかったと思います。それでも、担任していたのが、まだ中学年の3年生で、「先生の言うことはきくもの」という雰囲気があったためか、特に問題が起こることはありませんでした。授業づくりへの不安など、初任者ならではの大変さはありましたが、順調な1年間が過こせたのです。

ところが、5年生の担任になった2年目の1学期、「指導すべきこと」を優先した対応に、子どもたちから大きな反発を受けたのです。「子どもに指導が通らない」「先生は何も聞いてくれない」というモヤモヤとした関係になり、指導を繰り返した数人の子どもに「教室にいたくない」とまで言われてしまいました。

このままではいけないと関係改善に努める中で、子どもが話し掛けやすい先生になるためにも、笑うことを心掛けるようになりました。無理して「先生らしく」するより、「自分らしく」笑うことで、自分自身もずいぶん楽になりました。こじれてしまった子どもたちとの関係は、3学期に入る頃には無事修復。当時、関わった子から、その時抱えていた気持ちを教えてもらうこともでき、「あの時は大変だったよね」などと話し合うこともできるようになりました。

今後の課題は?

子どもたちが、子ども同士の関係の中で成長していける学級経営です。現在担任している5年生は、まだ教師である私を見て、やって良いことや悪いことを判断し、動いているように感じます。もっと、子どもたち同士の話し合いの中で、学び、行動できるようにしていきたいです。

実は、初任の年に担任し、現在6年生になった子どもたちが、そうしたことができる子どもに成長しています。担任している5年生を、来年持ち上がりで担任できるとは限りませんが、6年生になったときの成長のために、今できる学級経営の工夫を試みているところです。

読者へのメッセージ

何かあったときに助けてもらえる人間関係をつくることは、とても大切です。私が子どもたちとの関係で大変な状況になったとき、乗り越えることができたのは、周りの先生方のおかげです。教室を出て行ってしまった子どものサポートをしていただいたり、雑談を通して子どもたちの気持ちを知るヒントをいただいたり、たくさん助けていただきました。

良い人間関係をつくるためには、周りの人を大切にすることが必要です。「子どもが好きだから教師を目指す」という人は多いと思いますが、私は今、子どもたちも好きだし、先生方のことも好きです。誰かを大切にすること。その誰かとたくさん話し、しっかり聞くこと。学生のうちから、そうしたことを心掛けておくと、教師になってからの人間関係づくりに役立つと思います。