2018.11.01

スイスイ分かる! 「新学習指導要領」スーパーガイド 第9回「小学校 プログラミング教育」 

第9回テーマ「小学校 プログラミング教育」

大改訂となった新学習指導要領(2017年3月告示)。膨大な内容の中から、試験に出るポイントを12のテーマに分け、専門家が分かりやすく解説していきます。

プログラミング教育導入の背景

2020年度から、すべての小学校でプログラミング教育が必修化されます。従来から中学校では「技術・家庭科」、高校は「情報科」などを通して、プログラミング教育は取り入れられていましたが、小学校ではまったく初めての教育内容です。

では、なぜ小学校からプログラミング教育が導入されるのか、考えてみましょう。

今後、進化した人工知能が人間に替わっていろいろなものを識別したり、身近なものの働きがインターネット経由で最適化されたりする、いわゆる「第4次産業革命」や「Society5.0」ともいわれる時代が到来し、社会の在り方が大きく変わっていくと予測されています。こうした変化は、さまざまな課題に新たな解決策をもたらし、新たな価値を創造していく人間の活動もより活性化され、私たちの生活もより便利で豊かなものになると期待されています。

すでに今でも、私たちの生活には多くのコンピュータが使われています。コンピュータを内蔵していたり、コンピュータで制御されたりしているものをすぐに10個以上は挙げることができるのではないでしょうか? 自宅ではテレビ、スマートフォンはもちろん、炊飯器、電子レンジ、ポット、街に出るとエレベーター、エスカレーター、自動ドア、照明器具、駅の改札機など多岐にわたっています。あらゆるものがインターネットを通じてつながる、いわゆるIoT(Internet of Things)技術も実現しています。

それでは、こうした社会においては、どのような人材が求められているのでしょうか。従来の読解力、数学的思考力などの基盤的な学力に加え、「情報活用能力」が一層、重要になってきます。プログラミング教育がねらいとしている「プログラミング的思考」ができることも、この情報活用能力に含まれています。

プログラミング的思考とは、具体例を挙げると、子供たちが身近な生活でコンピュータが活用されていることに気付き、「どうやって動いているんだろう」「どの順番で作動しているんだろう」と興味をもち、問題解決には必要な手順があることを理解することなどを指します。そして、早い段階からこのような資質・能力を育成することが、これからの社会に求められています。

プログラミング教育のねらい―「コーディング」ではない

プログラミング教育のねらいは「小学校学習指導要領解説 総則編」(2017年7月)の第3章第3節「教育課程の実施と学習評価」で、次のように記述されています。

このように、小学校におけるプログラミング教育は、あくまでもコンピュータを活用した体験が中心であり、コーディング(プログラミングする知識・技能)を覚えることではありません。まずは体験を通して、身近な生活の中にあるコンピュータに目を向け、その仕組みを考えられるようになることが重要です。

小学校での学習活動

プログラミング教育は、学習指導要領に例示されている単元等に限定することなく、教育課程外(学校内外)においても実施することが望まれています。文部科学省ではプログラミングに関する学習活動の例を次の6つに分類しています。

このうち「A分類」は、プログラミング教育を確実に実施しなければならない教科等の単元で、①「5年生算数の正多角形の単元」、②「6年生理科の電気の性質や働きの単元」、③「総合的な学習の時間における探究的な学習への位置付け」の3つが該当します。
例えば、①の5年生の算数では、次のような指導場面が想定されています。

この学習では、「正多角形について、『辺の長さが全て等しく、角の大きさが全て等しい』という正多角形の意味を用いて作図できることを、プログラミングを通して確認するとともに、人にとっては難しくともコンピュータであれば容易にできることがあること」(前出の「手引」P.20)に気付かせることをねらいとしています。ここで使われるプログラミング言語は、左図のように数字を入力するだけで図形がかける簡単なものを使います。

また、プログラミング教育の学習活動の「B分類」は、学習指導要領に例示はされていなくても、学校や学級担任の裁量で、各教科等の目標を達成するためにプログラミングを体験したり、プログラミングを活用したりしながら実施することができるものです。写真は、4年生理科の電気のはたらきの単元終了後の発展学習で行われたプログラミング教育の学習活動です。ここでは電気を制御するプログラムを作成して、コンピュータによって電気を制御することについての見方や考え方を養う活動を行っています。具体的には、照度センサーを利用して、教室が暗くなったら教材からお化けが浮かび上がる、というプログラムを作成しています。

プログラミング教育は、誰もが体験したり、学習したりしてきた分野ではありません。まずはプログラミングに触れて、体験することで理解が深まっていくはずです。NHK学校放送番組には「Why? プログラミング( http://www.nhk.or.jp/sougou/programming/ )」というプログラミングを学習できる番組も用意されています。試しに、視聴してみてはいかがでしょうか。

著/佐藤 和紀(常葉大学教育学部 専任講師)

次号では「特別支援教育」を解説します。

※ ※内容は変更になる可能性があるのでご了承ください。