2018.08.24

File01 小林 優(こばやし・ゆう)先生 埼玉県立春日部特別支援学校

一人ひとりの顔を見て、
ゆっくりはっきり話す小林先生。
子供たちの反応に、笑顔がはじけます。

初任の年は、どんな年でしたか?

小学部5年生の担任になったのですが、初めてのことばかりで、めまぐるしい1年間でした。
特別支援学校では教科書の内容にとらわれず、子供の実態に合わせて授業内容を考えるので、どんな授業をするか、教材には何を使うのかといったことから準備する必要があります。さらに研修や学校行事もたくさんあって、ずっとバタバタしていました。学級の子供たちの個性も想像以上にさまざまで、対応に戸惑うことも多かったです。例えば、力加減が分からずつい手が出てしまう子に近寄り、「叩いちゃダメでしょ」と言っても、言葉が伝わらず、むしろ、先生が近くに来てくれたと喜んでしまう。表出言語が少ない子や聴覚より視覚の反応の方が良い子には、声の調子や表情で伝えるなど、周囲の先生方に指導方法を教えていただき、対応を工夫していますが、子供たちの示す問題行動にどう対応していくのかは、今もまだ勉強中です。

2年目になり、できるようになったことは?

少し余裕ができてきたことで視野が広がり、一人ひとりの子供への対応を考えられるようになってきたと思います。
2年目の今年は、昨年からの持ち上がりで6年生を担任。学級には8人の子供が在籍し、私を含む教師3人で担任しています。子供たちの中には、てんかんなどの発作がある子や骨の弱い子、言葉で伝えられる子もいれば、言葉の少ない子もいます。一人ひとりの実態を知り、表情や発する声をよく聴いて、その子に合った指導をするように心掛けています。

今の一番の課題は?

授業です。初任の年は、子供たちが「やりたい」と思えるような授業を自分の中の目標として、教材研究などに取り組んできました。今年は「やりたい」に加え、「できた」と感じられる授業を目標にしています。そのため、1学期の半ばくらいまでは、子供たちの様子を観察し、一人ひとりの「できること、できないこと」の把握に努めました。そして、プリントなどの教材に集中して取り組める子には、積極的に課題を出す。自信がなく、「できない」「無理」と言ってすぐに立ち歩いてしまう子には、まずは集中して取り組めるような教材を探し、スモールステップで「できた」経験を重ねていけるようにしています。
少しでも子供たちの気持ちが授業に向くように、書籍などを参考に教材を作成したり、子供たちの反応を見て改良したりを繰り返しています。

これまでの教員生活で、一番嬉しかったことは?

初任の年の文化祭です。本校の文化祭「はるきら祭」は、毎年11月に行われています。小学部から高等部まで、それぞれが出し物などを発表する大きな行事なのですが、初任の年はその学年担当を任せていただいていました。

小学部の4・5・6年生は、それまでリボンを使ったダンスの発表が続いていて、そろそろリニューアルを考える時期でした。そこで、他の担当の先生方と相談し、動物の扮装をしてパフォーマンスをすることを決定。そこからは学年ことに、何に扮装するか、何をするか、曲はどうするかなど、あれこれ内容を考え、練習を開始しました。ところが、実際に練習を始めると、子供たちの気持ちが乗らなかったり、予定していた動きができずに変更が必要になったり。夏ころから始めた準備練習期間中には色々なことがありました。

ようやく迎えた「はるきら祭」当日、5年生はタヌキの扮装をして、でんぐり返しや曲に合わせたダンスを披露。普段人前に出るのを恥ずかしがってしまう子も頑張ってくれて、パフォーマンスは大成功でした。子供たちが生き生きとして楽しそうな顔を見せてくれたことで、保護者の皆さんにも喜んでいただくことができて、本当に嬉しかったです。

読者へのアドバイスを

私が特別支援学校の教師を目指し始めたのは小学生の頃。同じ幼稚園・小学校にいたダウン症の子のことがなぜか気になり、お手伝いを続けていたことがきっかけです。以来、その仕事についてずっと想像してはいたのですが、実際に特別支援学校の現場を見たのは、大学入学後、特別支援学校でのボランティアを始めたときでした。私の場合その学校で、いつもニコニコ笑顔でステキな先生と出会い、「特別支援学校の教師になる」という決意を新たにすることができました。

ー方、学校現場には大変な面もあります。例えば特別支援学校には、暴れてしまう子やトイレを失敗してしまう子もいます。そうした部分を知らずに飛び込んでしまうと、後から苦しくなってしまうかもしれません。だからこそ、学生の方には学校ボランティアをお薦めします。
教育実習でも学校現場を体験することはできますが、実習生は授業準備など「自分がするべきこと」に気が向いてしまいがちで、周囲の様子を見ることが難しいように思います。子供たちの様子や先生方の日常的な動きを落ち着いて観察できる学校ボランティアは、教師の仕事を知る良い経験になると思います。