2018.12.25

そもそも「教育相談」って何?

「教育相談」と一言でいいますが、具体的には何を指しているのでしょうか。教育相談の基本中の基本事項と教員採用試験で問われることについて、編集部が大池先生に質問し、答えてもらいました。

教育相談って具体的にどんなことをするのですか?

「相談」と言われると、児童生徒の話を聞く行為を想像しがちだけど、「教育相談」はそれだけに留まらないよ。児童生徒の心の成長を支える大人の行為全般が、教育相談に含まれるんだ。

あらゆる機会を通じて行う教育相談

 「教育相談」は、一言でいえば、「一人ひとりの生徒の教育上の問題について、本人又はその親などに、その望ましい在り方を助言すること」(現行中学校学習指導要領解説(特別活動編)より)を指します。
 かつては教員の中でも、「教育相談」と聞くと、生徒指導担当や、カウンセラーが行うような、子どもの悩みを解決する特別な活動をイメージする人がたくさんいました。もちろん、そうした行為も「教育相談」の一部であることは間違いありません。しかし、教育相談の方法としては「1対1の相談活動に限定することなく、すべての教師が児童生徒に接するあらゆる機会をとらえ、あらゆる教育活動の実践の中にいかし、教育相談的な配慮をすることが大切」(同)とされています。
 「相談」と聞くと、改まった場で、1対1で行なうような特別な活動を想像するかも知れませんが、そうではなく、児童生徒を成長させるために行う教師の「すべての教育活動」が「教育相談」なのです。
 言い換えれば、教員は日々、「教育相談的な姿勢」を心掛けて、児童生徒に接していくことが求められるということです。教員志望者の読者の皆さんには、まずはこの基本を理解してもらいたいと思います。

 教育相談の対象となるのも、課題を抱えた児童生徒だけにとどまりません。いわゆる、ごくごく「普通の児童生徒」も対象となります。児童生徒の日常の心の悩みから、進路の悩みまで、幅広く支えていくのが、教育相談です。
こう聞くと、「生徒指導」と同じと思う人もいるかも知れません。しかし、生徒指導が行事や特別活動などで「集団」に焦点を当て指導をするのに対し、教育相談は日常の指導や声かけ、面接などで児童生徒の「個」に向き合って支援していくという違いがあります。

解決できない課題が出てきたらどうするのですか?

外部の専門家の力を積極的に活用し、解決を図るよ。専門家には「スクールカウンセラー(SC)」と「スクールソーシャルワーカー(SSW)」がいるよ。

児童生徒と保護者の悩みを聞き、支援するスクールカウンセラー

 心の専門家でないと解決できないような深刻な悩みを抱える児童生徒もいます。そうした児童生徒の心を支援するのが、スクールカウンセラーです。
 スクールカウンセラーは、心理学に関する高度な知識と経験をもった専門家であるだけでなく、児童生徒にとっては、普段接する教員には知られたくない悩みや不安を打ち明けられる存在です。また、教員側にとっては、教員と、児童生徒・保護者の間に立って、仲介をしてくれる「架け橋」のような存在にもなり得ます。
 スクールカウンセラーは、週に何度か学校に来て、児童生徒や保護者に直接的な支援を行います。
 大事なことは、その際、教員も、児童生徒と保護者に、どのような支援が必要なのか、スクールカウンセラーから指導・助言を受けるということです。教員はスクールカウンセラーと連携を密にとることを意識しましょう。この視点は、教員採用試験の面接や論作文の回答に盛り込めば高評価を得られるものでもあるので、押さえておいてほしいと思います。

社会福祉の知識を備えたスクールソーシャルワーカー

 近年は、「子供の貧困」といった問題も深刻化しています。厚生労働省が2017年に発表した統計によると、子供の貧困率は13.9%(2015年)。これは、約7人に1人の子供が、貧困状態にあるという数値です。では、例えばあなたの教室に生活に苦しむ家庭の児童生徒がいた場合、どのように対応しますか? 教師は、福祉の専門家でないので、せいぜい「市役所にいって相談しましょう」と言うくらいしかアドバイスできないのではないでしょうか。
 こうしたケースで、力を発揮するのがスクールソーシャルワーカーです。スクールソーシャルワーカーは、福祉の知識を持った専門家です。生活に苦しむ児童生徒がいた場合、家庭に訪問し、「就学援助」やときには「生活保護」といった具体的な手立てを提案し、それらを実現する手助けをします。
 近年、教員採用試験では、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの違いなどがよく問われます。前者は子供や保護者の心の支援、後者は福祉の実現を行うということを押さえておきましょう。