ここまでは、「教育相談」の基礎知識を整理してきました。それでは、実際に教師になって教育相談をする際は、どんなことに気を付けるべきなのでしょうか。編集部が大池先生にインタビューしました。
2018.12.25
ここまでは、「教育相談」の基礎知識を整理してきました。それでは、実際に教師になって教育相談をする際は、どんなことに気を付けるべきなのでしょうか。編集部が大池先生にインタビューしました。
――受験生も教員になったらすぐに教育相談をしていくことになります。どんなことに気を付ければいいですか?
大池 まずは、児童生徒が相談に来やすい姿勢をつくることです。児童生徒に「相談したい」と思われる先生にならないと、「教育相談」は成り立ちません。そのためには、日常から児童生徒に対する接し方を意識する必要があります。
児童生徒が相談に来やすい先生になるためには、以下のようなことを心がけるといいですね。
●きれいな言葉づかい
→日常の言葉づかいがきれいで、正しいと、 児童生徒も安心しやすい。
●きれいな板書
→言葉づかいと同じく、板書もきれいにすると印象がよい。
●はっきりとした声
→ごにょごにょとしゃべると、児童生徒に不安を与える。言葉をはっきり言うことを心がける。
●清潔感のある服装
→人の印象は外観で大きく左右される。普段から、明るく清潔感のある服装を。
●身振り手振りを交えたコミュニケーション
→言葉だけでなく、体を使って伝えると、より円滑にコミュニケーションできる。
●挨拶をきちんとする
→児童生徒に安心感を与えるため、挨拶はきちんとする。
●自己開示も大事
→児童生徒に教師自身への興味を持ってもらうため、少々の自己開示(自身の個人的なことを話す)も時には必要。
●フェアな姿勢
→誰に対しても同じ姿勢で接し、ひいきをしてはいけない。
大池 また、これらに加えて、何より重要なのが、授業力です。授業力がないと、児童生徒に評価されず、相談もされません。
ですから、読者の皆さんには、教師になったら研修などを通じ、常に授業力を磨くことだけは忘れないでほしいと思います。
――問題を抱える児童生徒にとって、教師に相談するのは勇気がいることです。相談に二の足を踏んでしまう児童生徒に対しては、どのように接するべきでしょうか?
大池 児童生徒の方から相談に来てくれればやりやすいのですが、実際はなかなかそううまくいきません。特にプライベートな問題は人に話すこと自体抵抗があり、口に出しづらいものです。
ですので、児童生徒が口に出さずとも、問題を抱えていることに気が付き、声を掛けられる先生が理想です。課題を抱えている児童生徒は、意識・無意識に関わらず、以下のような何らかのサインを発しています。それを見つけて関わっていくことを心がけてほしいですね。
●サインに敏感になる
→児童生徒がSOSを発している場合、すぐに気づけるよう、日ごろから目を凝らし、気を配る。
●非言語コミュニケーションで見分ける
→表情や服装、持ち物の変化等、言葉以外の手段から児童生徒の情報を読み取る。
●「みる」を使い分ける
見る=通常の見る。 観る=見物する。 診る=診察する。 看る=世話をする。 視る=調査する。
瞥る=ちらっと見る(一瞥する)。
実際、ほとんどの児童生徒は、自分からは相談に来ないものです。トラブルに困惑してしまい、体が固まっている児童生徒もいます。だからこそこちらから声掛けに行かないと、問題が発覚しないケースが多いのです。何らかの異変を感じ取ったら、積極的に声を掛けてあげてほしいですね。
――児童生徒のトラブルの中には、家庭環境や金銭的な問題のような、専門家でないと解決が困難なケースもあります。そのような場合、どう対処すべきですか?
大池 児童生徒の抱えているトラブルが家庭問題や金銭だった場合、スクールソーシャルワーカー(SSW)に相談すべきです。これまで見てきたとおり、SSWは福祉の専門的な知識を持ち、児童生徒の家庭を訪問することができます。教育相談の現場ではSSWをもっと活用すべきですね。
特に家庭問題のような繊細な扱いを要する問題は、自分の価値観だけで扱うのは危険が多いので、専門家のアドバイスが必要です。
――先ほどフェアな姿勢が大事であると聞きましたが、特定の児童生徒の相談を受けていると、他の児童生徒からひいきをしていると見られないでしょうか?
大池 フェアとは、児童生徒によって対応を変えない、という意味です。児童生徒によって姿勢を変えるのではなく、どの児童生徒に対しても同じ姿勢で臨むことです。校内では、相談に来た児童生徒に対する接し方が、他の児童生徒にも見られています。
「この先生はAさんの悩みを親身になって聞いていた。これなら自分の相談も親身になって聞いてくれるだろう」という風に、他の児童生徒への接し方を見て、相談するか決める児童生徒もいますから、どの児童生徒にもフェアに対応することが大事です。
また、自分がどのように対応しているのかを、児童生徒に見えるように動くことも大事です。子どもの間では、誰がどんな問題を抱えているか薄々わかっていますので、うまく解決すれば、同じような問題を抱えた児童生徒が次に相談できるようになるのです。これは先ほど述べた、児童生徒が問題に遭った時に、相談に行こうと思われるような先生になる、ということにもつながります。