第3回 「本論①」「本論②」の書き方をマスターしよう
筆記で高得点を取り、面接もうまく行ったけど、論作文がボロボロで涙をのんだ……という人は、少なくありません。中には、論作文試験がネックとなって、毎年度合格を逃している人もいます。筆記試験のように、勉強した分だけ得点になるとは限らないのが論作文試験。いろんな対策を試したけど、効果がなくて途方に暮れている人もいることでしょう。
そんな人たちのために、『教員養成セミナー』では12月号から5回にわたり、全く新しいタイプの論作文対策法を紹介していきます。講師は、多数のメディアから執筆依頼がガンガン入る「文章のプロ」であり、長く教員採用試験対策の指導にも携わってきた教育ジャーナリスト・佐藤明彦氏。「活字が苦手!」という人は、ぜひご一読ください。
「本論①」「本論②」作成のポイントは適切な「柱立て」と「論→策」の構成
●墓穴を掘りやすいのが「本論」です
本連載の第1回で、教員採用試験の論作文は「序論」「本論①」「本論②」「結論」の4層構造で書くべきだと解説しました。今回は、このうち2層目と3層目にあたる「本論①」と「本論②」について、具体的な書き方を解説していきます。
前回、この4層の中で最も重要なのは「序論」だと述べました。理由は、「序論」が第一印象を大きく左右し、面接に例えれば「最初の10秒」に相当するからです。ここで採点者に良い印象を与えられれば、合格ラインに大きく近づくことができます。
とはいえ、「本論①」や「本論②」が、適当でよいというわけではありません。ここであまりいい加減なことを書けば、序盤のリードを失い、逆転負けを食らってしまいかねません。
「本論①」「本論②」で書くのは「方策」です。出題テーマについて、自身が教師としてどのように取り組んでいくのかを具体的に書きます。点数を稼ぐには、特徴的な実践を述べたいところではありますが、奇をてらってユニークなことを書きすぎると落とし穴にはまる可能性があります。特に、実践経験の浅い大学生は要注意。背伸びをして書くと墓穴を掘りやすいのが、「本論①」「本論②」なのだと覚えておいてください。
●大事なことは2点あります
「本論①」「本論②」で、それぞれ意識してほしいことが大きく2つあります。一つは適切に柱(見出し)を立てること、もう一つは「論→策」の構成で書くことです。この2つを意識して書けば、論作文全体が大きく崩れることはなく、序盤戦で築いたリードを保ったまま、終盤戦へとつなげられます。
今回は、この2つを中心に、「本論①」「本論②」の具体的な書き方を解説していきます。
STEP1 テーマ別に「柱」を立てる
●見出しは建物で言えば「大黒柱」に当たる
「本論①」「本論②」を書くにあたって、最初にすべきことはそれぞれの柱(見出し)を立てることです。この設計作業をしっかりと行わないと、大黒柱を失った建物のように、全体がガラガラと崩れ落ちてしまいます。まずは、以下の10の定番テーマについて「本論①」「本論②」の柱(見出し)の立て方を考えていきます。
⑴いじめ
⑵「確かな学力」の向上
⑶「自己肯定感」の育成
⑷規範意識の醸成
⑸発達障害への対応
⑹情報教育
⑺学校安全
⑻教員不祥事の防止
⑼キャリア教育
⑽新学習指導要領
これら10のテーマは、やや包括的にくくられています。例えば、「⑴いじめ」については、「いじめの未然防止」を書くような問題もあれば、「いじめ発生時の対応」を書くような問題もあります。また、「⑹情報教育」は、「プログラミング教育」など正の側面を書くような問題もあれば、「情報モラル教育」など負の側面を書くような問題もあります。
●「柱」をどう立てるか
ここでは、そうして細かく出題された場合でも対応できるような形で、柱の立て方を解説していきます。
まずは、下に示した表をご覧ください。定番10テーマの柱の立て方を示したものです。左側から「テーマ例」「柱の例(レベル1)」「柱の例(レベル2)」となっています。この「レベル」について「?」と感じた人もいると思うので、詳しく解説していきます。
もし、出題内容が「テーマ例」の列のように包括的であれば、「レベル1」の列にある内容を柱として立てればOKです。例えば、「⑴いじめ」全般について問う問題であれば、「本論①」の柱に「いじめの未然防止」を据え、「本論②」の柱に「いじめ発生時の対応」を据えます。いじめに限らず、不登校や暴力行為などの生徒指導上のテーマは、「予防」と「対応」の視点から柱を立てるのが、一つのセオリーです。
●講師・佐藤明彦(教育ジャーナリスト)
教育分野の専門紙・雑誌などに寄稿する教育ジャーナリスト。教員採用試験対策講座「ぷらすわん研修会」の事務局長も務める。教育新聞で「合格を勝ち取る教採対策講座」を連載中。著書に『職業としての教師』(時事通信社)。