自分のルーツを思い描くこと
「青天の霹靂」とは、青く晴れ渡った空に突然激しい雷鳴が起こる(これが「霹靂」ですね)ことから、予期しない突発的な事件が起こることをいいます。
しかし、よく考えると1人の人間がこの世に生まれる確率は、とんでもないことだと分かるはずです。生涯で作る精子の数と生涯で作る卵子の数で計算すると、まさにとんでもない確率で私たちは生まれてきたことになるのです。生まれたこと自体が「青天の霹靂」以上の奇跡なのです。
この作品は、お笑い芸人の劇団ひとりの同名小説を基にした彼の記念すべき監督デビュー作です。
売れないマジシャンとして鬱々とした人生を送る晴夫に絶縁状態だった父の訃報が届き、やりきれない気持ちに苛(さいな)まれます。晴夫は高校卒業してからラブホテルの清掃員をしている父の正太郎とは会っておらず、どこにいるかも不明でした。また、母親についても、正太郎の浮気が原因で激怒して晴夫を産んですぐ出て行ったと聞かされていました。警察から正太郎が亡くなったと報せを受け、ホームレスをしながらも1枚の写真を大切にもっていた父の姿に衝撃を受けます。それは、晴夫の赤ん坊の写真だったのです。そんな彼に突然の雷が直撃し、意識を取り戻した後、40年前の浅草にタイムスリップしたことに気付きます。そこで彼は、演芸ホールでマジックを披露するマジシャンやその助手を務める母と出会い、そして、ひょんなことから父とコンビを組むことになります。
人生は、思った通りに行かないものです。「なんで生まれてきちゃったんだろう?」と思うことも時にはあります。でもそんなとき、自分としっかり向き合うには、自分のルーツである父や母と自分との関係をしっかり見直してみることがいいのではないでしょうか。
この映画、ユーモラスな中にも人生を考えさせ、未来へ続く感動の「涙」が実感できる作品だと思います。
●『青天の霹靂』
2014年/日本/96分
監督:劇団ひとり
出演:大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとり 他
発売元:アミューズソフト
販売元:東宝
価格:DVD¥3,800+税(通常版)
好評発売中
吉田 和夫
玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授/教育デザイン研究所代表理事/元東京都公立中学校校長